柔道の強豪、天理大は5~7月に4年生の男子部員4人による1年生部員への暴力行為があったと4日、発表した。全日本柔道連盟(全柔連)は、藤猪省太部長ら関係者を5日に呼んで事情聴取するとともに、懲罰委員会を設置して処分を検討する。同部長が郵送した全柔連理事の辞表が届き次第、受理する。

 柔道界では女子代表での暴力指導問題が1月に発覚し、全柔連は4月から「暴力の根絶プロジェクト」で対策を練っていた。そのさなかに、複数の五輪金メダリストを輩出した有力大学で部内暴力が続いた。藤猪部長は7月に事実を知っていたが学外への報告などはせず、一連の不祥事で8月に体制が一新された全柔連の理事に就いた。

 全柔連の近石康宏専務理事は「憤りを感じる」と語り、厳しい態度で臨むことを強調した。

 天理大によると5月中旬に4年生4人が練習中の態度を理由に1年生十数人を平手打ち。その後も7月にかけて特定の1年生を木刀でたたくなどした。鼓膜が破れたこの1年生が退部を申し出たことで問題が発覚。藤猪部長は記者会見で「大学が対処してから(全柔連に)報告しようと思っていた」と報告の遅れを釈明した。

 1日終了した世界選手権で73キロ級を制し4日に帰国した大野将平選手は天理大主将。山田常則副学長は同選手が暴行現場にいたことを認め「彼が手を出したわけではない」と述べた。暴行した部員の処分について大学は5日の全学協議会で決める。土佐三郎監督は8月20日から謹慎処分を受けている。

 藤猪部長は1970年代に世界選手権を4連覇した実績があり、2000年シドニー五輪銀メダリストの篠原信一・前日本男子監督や五輪3連覇の野村忠宏(ミキハウス)らも天理大卒。