<柔道:講道館杯全日本体重別選手権>◇初日◇14日◇千葉市・千葉ポートアリーナ

 白帯の女子中学生が伝統の大会の表彰台に上った。女子52キロ級で山本杏(あんず=六角橋中3年)が敗者復活戦から勝ち上がり、加賀谷千保(山梨学院大)との3位決定戦を制した。女子中学生が表彰台に上がるのは97年(当時は全国女子体重別選手権)に中3で48キロ級を優勝した倉持亜佐美以来の快挙。初段の昇級審査に通っていないため、12月のグランドスラム(GS)東京の出場資格がなく、選出を見送られたが、未来のヒロイン候補が誕生した。

 スポーツ刈りの短髪は少年のようだったが、繰り出す技は大人のように切れ味鋭かった。加賀谷との3位決定戦。2カ月前の全日本ジュニア選手権で完敗したが、この日は背負い投げと見せかけての大内刈りなどでポイントを連取し、優勢勝ちだ。「初のシニア大会で背負うものもなかった」と、あどけなかった。

 トップ選手が集う大会で3級の白帯のまま出場。多忙で初段の昇級試験を受けられなかった。10月にようやく受けたが取得は数カ月後の見込み。それでも「白でも黒でも変わりはない」と堂々としていた。

 柔道を始めたのは3歳。父主税さん(44)がコーチを務める朝飛道場で腕を磨いた。母昌子さん(41)は元ボディービルダーで栄養学に精通し、減量の負担も少なかった。日課は父娘ともに敬愛する東京五輪金メダリスト岡野功氏の著書「バイタル柔道」を就寝前に1ページずつ読むこと。柔の道を一直線に進んでいる。

 今大会の実績で本来なら12月のGS東京に出場できる。だが段位がなく資格がない。吉村強化委員長は「1本取れる技を磨いて欲しい」。山本は「目標は五輪に出て優勝し、次の大会でも連覇。でもロンドン五輪は意識していない。やることがいっぱいある」と地に足をつけていた。【広重竜太郎】