<世界体操>◇最終日◇16日◇東京体育館

 男子個人総合で大会史上初の3連覇3度目の優勝を飾った内村航平(22=コナミ)が、種目別決勝の鉄棒で世界大会自己最高の16・333点で銅メダルを獲得した。技の難度を表す演技価値点(D得点)を、個人総合から0・6点も上げる構成で挑み、見事に着地を決めた。今大会4個のメダルを獲得した内村は、世界選手権でのメダル総数が9個となり日本男子歴代5位。日体大の先輩で師匠でもある84年ロサンゼルス五輪個人総合金メダリストの具志堅幸司(現日体大教授)にあと1と迫った。12年ロンドン五輪では自身初の五輪金メダルで名実ともに偉大な先輩に肩を並べる。跳馬では沖口誠(25=コナミ)が銅メダルを獲得した。

 大会の最後は、やはり内村の“ドヤ顔”だった。「(手が)離れる前から(着地が)止まると思った」。伸身の新月面宙返りがいつもと同じ弧を描く。着地でマットに足が吸い付いた。大会の最終演技者の内村は、地鳴りのような歓声に両手でガッツポーズ。「本当にうれしかった」。得意満面の笑みを浮かべた。

 演技価値点のD得点が7・5点以上の鉄棒のスペシャリストと戦うため、これまでより0・6点上げた7・3点の自身最難関の構成で挑んだ。「場違いかな」と思ったというハイレベルの戦い。その中で技の出来栄えを示す10点満点のE得点で、ただ1人、9点台をマークした。「エレガンス賞を取ったので出さないといけない」。世界大会自身初の16点台に乗せ、銅メダルをもぎ取った。

 今大会では新境地を開いた。9日の団体総合予選。両ふくらはぎのけいれんで、床運動は「(力を)1割ぐらいしか使わなかった」。222人中トップ。「こんなに楽にできるなんて。新しい境地に踏み込んだ」という内村は「今度は、しんどくても、ひょひょいとできると思う」。

 今大会で計4つのメダルを獲得。世界選手権の獲得メダル数が通算9個になった。師匠で日体大の大先輩、具志堅氏にあと1個と迫った。その具志堅氏は「彼ならすぐ抜いてくれる。教え子に抜かれるならうれしい」と話した。ただ内村は具志堅の持っている五輪の金メダルはまだない。初出場の北京五輪も団体と個人で銀メダル。特に今大会で逃した団体の金メダルは悲願だ。「練習から誰も失敗しない演技をしていかないといけない」。12年ロンドン五輪では、団体と個人の2冠で総合王者として“ドヤ顔”を世界中に見せる。【吉松忠弘】