<柔道:全日本選抜体重別選手権>◇最終日◇6日◇福岡国際センター

 男子60キロ級は高藤直寿(20=東海大)が初優勝し、2連覇を狙う世界選手権(8月、ロシア・チェリャビンスク)代表の座をつかんだ。昨年から取り組む「高藤スペシャル(変形大腰)」で一本勝ちするなど進化を証明。国内大会では初の頂点に立ち、金メダルが期待される16年リオ五輪へ「無敵になる」と誓った。女子78キロ超級、男子100キロ級と100キロ超級を除く世界選手権代表が発表された。

 高藤が相手を持ち上げる姿に、2度会場が沸いた。

 1度目は北原(筑波大)との1回戦。2分10秒過ぎに抱き合うように密着した状態から、右手で相手の腰を抱えて豪快に後ろに投げた。まるでプロレスのフロントスープレックスのような光景。一本勝ちの決まり技は「抱分(だきわかれ)」。めったにない捨て身技は、山下泰裕氏に「珍しい。腹筋と背筋がしっかりしないとできない」とたたえられたほどだ。

 2度目は石川(了徳寺学園職)との決勝戦。残り約2分で有効を先行された直後、前に出て右手を腰に回す。相手の体重を自分の体に乗せて回してぶん投げた。「移腰(うつりごし)」での技あり奪取で逆転勝ち。「これで胸を張って日本代表と言える」と初の日本一を喜んだ。

 技名こそ違うが、本人は「自分の中では同じ」と話す「高藤スペシャル」が、ついに完成期を迎えた。左組み手とは逆方向である右への大腰。昨年から取り組む意表を突いた変形技を、試合で見事な一本を取るまでに仕上げてきた。昨年夏に世界王者になってから、「筋肉を大きくするのではなく、体幹を強くしている」と地道なトレーニングを継続。相手を支えてもぶれない体の強さが身に付いてきた証しの大技で、2連覇への挑戦権を手に入れた。

 日本代表の井上監督は「世界の山だけでなく、日本の山、いわば富士山を登れたので一皮むける」と期待を寄せる。本人も「次はエベレスト!

 出る試合は全部勝ちたい。無敵になりたい」と意気揚々。常々「観客の度肝を抜くような勝ち方をしたい」と話す若き世界王者は、豪快に五輪の頂へ駆け上がっていく。【阿部健吾】

 ◆高藤直寿(たかとう・なおひさ)1993年(平5)5月30日、栃木県生まれ。7歳から柔道を始める。東海大相模中で全国中学校大会優勝。東海大相模高では1年で世界カデ選手権、3年で世界ジュニア制覇。東海大進学後の12年5月のGSモスクワでIJFグランプリシリーズ初優勝。以降、13年世界選手権含めて国際大会7連勝中。得意技は小内刈り、内股。左組み。世界ランク1位。家族は両親と姉。160センチ。