ラグビーのW杯が日本にやってきた。世界20の代表チームが世界一を争う。北海道から九州まで、全国12会場で48試合。44日間の会期は、五輪の3倍、サッカーW杯の1・5倍。11月2日の決勝戦まで、日本列島がラグビーで燃える。

「日本でW杯を」。動き出したのは、03年だった。サッカーW杯の余韻が残る中、挑戦が始まった。「伝統」が重んじられる世界でアジアの日本は相手にもされなかった。地道なロビー活動で伝統をぶち破り、19年開催が決まったのは今から10年前、09年だった。

「日本なんかで、できるのか」と否定的だった世界のラグビー界にとって、今大会は「競技を世界に広める」ための挑戦になる。リオ五輪から7人制ラグビーが実施されるなど、ラグビーも本気で「普及」を考えなければいけない時期にきている。伝統国以外での初めての開催。成否が、ラグビー界の未来を決める。

実は、日本にとっても同じこと。高校生の競技人口が20年で半減し、大学やトップリーグの観客数も右肩下がり。「内向き」なラグビー界はコアなファンはいるものの広がることはなかった。サッカーなど他の競技に人気を奪われていた。

第1回の87年からすべて参加しているW杯も、出ては負けの繰り返し。日本の「弱さ」ばかりが目立ち、話題になることも少なかった。当時大学を中心にラグビーは超人気競技。「参加を辞退しては」の声もあったが、世界に挑戦したことが人気急落につながった。前回大会、南アフリカに勝って注目されたが、知られたのは五郎丸だけだった。

今大会でファン層を広げなければ、開催する意味はない。かつてのコアなファンは、年をとるだけ。未来のラグビーに危機感を抱く関係者は多い。開会式、映し出されるスタンドには年配のファンに交じって若者や子どもたちも多かった。彼らがW杯後にラグビーを見続けるかどうか。「一生に一度」で満足して終わってしまっては、ラグビー界に未来はない。【荻島弘一】