主将が全てをぶつけた。W杯3度目で初めて先発落ちしたフランカーのリーチ・マイケル(30=東芝)が、日本の推進力を上げた。後半の出場が想定されたが、NO8マフィの故障により出番は前半30分。ピッチに座り込んだマフィへ一声かけ、4万7813人の大歓声でスイッチを入れた。

少しの余力さえ与えない強烈なタックルは健在。後半16分には右サイドで激しく相手とぶつかり、右鎖骨付近を手で押さえながら倒れた。復活を願う声に背中を押され、1つの輪で主将を待つ仲間の元に戻った。細部の精度にこだわる声掛けを続け、迎えたノーサイド。4年前、W杯南アフリカ戦最終盤にスクラムを選び、歴史を変えた男は「日本にかなりのインパクトを与えられた。勝ちたいというメンタリティーがあった」と勝因に誇りを持った。

今週に入り、ジョセフ・ヘッドコーチと向き合った。1対1の空間で先発落ちを告げられた。「ラピース(ラブスカフニ)、姫野、マフィの方が状態がいい」。そう自分に言い聞かせ、心の微妙な変化は見せなかった。この日、指揮官は「正念場で出そうと思ったが(マフィの)ケガで思ったより早かった。今思えば、あの時間で良かった」。そう言わしめる姿だった。

次戦は中6日のサモア戦。アイルランドの選手たちが作った2列の花道を先頭で通り、主将らしく言った。「30分ぐらい喜んで、次の試合に準備したい」。3月に負傷した恥骨の影響は「ない」と多くを語らなかった。見つめる先はただ1つ。8強だ。【松本航】