イングランドがオーストラリアにリベンジし、07年以来3大会ぶりの4強を決めた。開催国だった15年大会で、1次リーグ敗退となる屈辱の黒星を喫した相手に40-16と完勝だ。前日本代表監督でオーストラリア人のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC、59)によって再建されたラグビー発祥の国が、03年以来4大会ぶり2度目の世界一へ前進した。

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イングランドのSOファレル主将が後半32分、PGを決めた。ゴール前左中間22メートル。距離も角度も難しくなく、33-16。残り8分、2トライ2ゴールでも届かぬ安全圏だ。その瞬間、スタンドの特大ビジョンにジョーンズHCのガッツポーズが写った。イングランドファン、日本の観客が大騒ぎし、イングランドのリベンジが近づいた。

ジョーンズHCがうれしそうに話した。「最初の20分は厳しかった。75%ボールを支配され、アタックもきつい。どう持ちこたえられるか。それができていいチャンスにつながった」。

母国開催の15年大会でラグビー発祥の地イングランドが味わった屈辱。オーストラリアに屈し、ホストチームとしてW杯史上初の1次リーグ敗退だった。再建のタクトはオーストラリア人に託した。03年大会でオーストラリアを準Vに、07年大会でアドバイザーとして南アフリカを優勝に導き、前回大会の南アフリカ戦など3勝で日本を躍進させたジョーンズHCだった。

エディー・スタイルの勝利。試合前に選手を「サムライ・スピリット」という言葉で鼓舞。立ち上がりの劣勢を粘り強いディフェンスでしのぎ、チャンスを呼ぶ。0-3の前半17分、通算50キャップ目のWTBメイがゴール左隅に飛び込み、逆転した。17-16と迫られた後半6分には、プロップ・シンクラーが絶妙のタイミングでDFラインのギャップを突いた。細かく、堅実で素早いパスでワイドに球を動かした。

名将の策もハマッた。1次リーグはCTBで使ったファレル主将を本職SOへ。後半に1次でSOだったフォードをCTBで投入。W司令塔で試合を進めた。意図を問われて、笑って答えた。「2人SOは25年前からやってるよ。デブとヤセでね。新しくない。進化の過程で起こること」。続けて、聞いた記者に言った。「フォードは(スタメンから)落としたんじゃないよ。今のラグビーは23人でするもの。(記者に)もういいかげん、こっち側(の感覚)に来て。メールアドレスを教えてよ!」。

我慢強い、理詰めのジョーンズ流ラグビーで、イングランドがプライドを取り戻した。【加藤裕一】