<卓球:世界選手権>◇30日◇女子シングルス2回戦◇横浜アリーナ

 「愛ちゃん2世」が、どでかい仕事をやってのけた。世界ランク99位の石川佳純(16=ミキハウスJSC)が、世界10位の帖雅娜(29=香港)を撃破。0-3と敗戦濃厚の状況から4ゲームを連取し、4-3で大逆転した。福原愛(20)と平野早矢香(24)が敗退した沈滞ムードを、次代のエースが打ち破った。16強入りをかけて1日、福岡春菜(25)との日本人対決に臨む。男子シングルスでも青森山田高の松平健太(18)が2回戦で世界12位呉尚垠(韓国)を4-3で破った。14歳の丹羽孝希は2回戦で敗退した。

 相手のショットが、コート外にそれていく。ボールが床に落ちるのを確認するまでもなく、石川の大逆転が決まった。両手を振りながら3度、ピョンピョンと飛び跳ねる。直後、ミキハウスの大島監督から労をねぎらわれると、涙を流して喜んだ。午後9時半すぎ、遅くまで残った観客にサプライズをもたらした。

 世界10位の強豪に、あっさり3ゲームを連取された。「負けて当たり前。ようやくそこで、そう思えたことが良かったです」。第4ゲームも、一時は6点差をつけられたが「そこから点数のことは考えず、開き直って打っちゃえ」。気持ちの割り切りが、思い切りの良さを引き出した。逆に3ゲームを連取して3-3に持ち込むと、16歳の勢いは止まらなかった。

 福原に続き、平野までが2回戦で格下に敗れた。「前の試合で、平野さんが負けて信じられなかった。でも相手も強かったし、自分の試合を一生懸命やるしかなかった。信じられないの一言です」。日本代表の女子最年少が、重苦しいムードを一気に吹っ飛ばした。

 07年の全日本選手権で史上最年少4強入りを果たし、注目された。同5月の世界選手権に、福原より4カ月早い14歳2カ月で出場した。だが世界舞台での実績は乏しく、五輪は出場できなかった。北京ではスタンドで応援した。卓球だけでなく、親の勧めで女子レスリングの吉田沙保里の試合も見に行った。金メダルに感動し、大舞台に立つ喜びを肌で感じた。

 「この1年、いろんな試合に出してもらって、いろんな経験をして、リードされてもあきらめなくなった。以前は強い選手とやると、もう駄目かなと思ったんですが…」。今大会直前は中国甲Aリーグ(2部相当)で鍛えた。今や中国語も通訳の必要がない。伸び盛りの高校2年生は、貴重な1勝でまた大きくなった。【佐々木一郎】