<全日本クラブ野球選手権:NTTグループ東北マークス6-9トータル阪神>◇最終日◇7日◇準決勝、決勝◇西武ドーム

 またしても決勝に手が届かなかった。NTTグループ東北マークス(宮城)が延長11回の末、トータル阪神(西近畿・兵庫)に逆転負け。3連投の遠藤雄文投手(21)が、183球を力投したが及ばなかった。80年オール常交(福島=現オールいわきクラブ)、92年一関三星俱楽部(岩手)に続く東北勢3チーム目の優勝を狙って臨んだ大会だったが、全国の壁は厚かった。

 打球が吸い込まれた左中間スタンドを見つめたまま遠藤は、しばらく動けなかった。3-3で迎えた延長10回。相手4番に2打席連続のソロ本塁打を許した。「甘い球は全部持って行かれる」。その裏、味方が同点に追いついたが、タイブレーク制により1死満塁で始まった延長11回、先頭打者に決勝2点打を打たれ、力尽きた。

 「全国では低めの制球が大事だった」と反省する遠藤だが、三瓶仁監督(42)は「よく粘ってくれた。若手の台頭が今大会の収穫」と評価。昨年までは経験豊富なベテラン頼みだったが前日、決勝打の新人加藤剛(19=東北高)ら、若手の活躍も大会を通じての収穫だった。

 ベテランと若手の融合。その潤滑油的な役割を担ったのが、3-4の10回裏に同点打を放ったDH佐藤茂徳(40)だ。東北福祉大では阪神金本と同期で、2番左翼手として全国制覇を果たした。2人は大学時代からムードメーカーで、今でも親友の間柄。その経験を生かし積極的に“アニキ”として若手に接触することで、チームの和が深まった。この日は金本からもらった革手袋などを身に着けて出場。「役に立たなかったな~。でもアイツが野球を続ける限り私も続けたい」とジョークを交えつつ感謝していた。

 全国との差も縮まりつつある。全体練習は週2度だが会社勤めが多く、平日は10人も集まらない。それでも2年ぶり2度目の4強入りで東北野球関係者に勇気を吹き込んだ。「効率の良い練習をして企業チームに勝つのが目標」と三瓶監督。まずは12日からの日本選手権予選で、本大会出場をつかむ。【三須一紀】