6回まで巨人は理想的な試合展開をしていた。先発山口はクオリティースタート(6回以上、自責点3以下)と好投。中継ぎ陣が不安定なだけに、終盤までもつれればゲームを落としかねない。序盤に点差を付けて先行逃げ切りがベストな戦い方だ。だが、その流れでも一時同点に追いつかれて、接戦を強いられた。

7回1死満塁、広島長野に同点打を打たれた場面を見てみる。投手はサイド右腕の田原。スライダーを4球続けて2ボール2ストライク。5球目で内角寄りのシュートをファウルされた。捕手小林は「もうスライダーを狙われているのでは?」と考え、裏をかいてインコース系で勝負したかったと推測できる。もしくは差し込まれたファウルから、外角への変化球狙いと考えたかもしれない。そして6球目、田原がシュートを内へ投げきれず甘く入ったところを痛打された。

選択肢としては悪くなかった。小林の意図も分かる。だが満塁。死球も許されない場面で、田原は5球目も6球目も内角を攻めきれなかった。捕手がやろうとしていることに、投手の能力が付いてきていない。ならば捕手は、その配球をあきらめる勇気も必要だ。そしてそれ以上に、要求通りに投げられない投手に問題がある。次打者の初球は内角に投げきった。打たれてからやっても遅いのだ。

ここまで巨人は勝利の方程式も不完全。その場しのぎに見える。昨年、西武はシーズン途中にヒース、マーティンの両投手を獲得して10年ぶりのリーグ優勝を果たした。現状を打破するためには、リリーバーを駆け込み補強するしかない。(日刊スポーツ評論家)

巨人対広島 6回表広島2死一、二塁、会沢(左)を三飛に仕留めた山口(右)は小林と話ながらベンチに引き揚げる(撮影・垰建太)
巨人対広島 6回表広島2死一、二塁、会沢(左)を三飛に仕留めた山口(右)は小林と話ながらベンチに引き揚げる(撮影・垰建太)