12年前、星野阪神の虎番キャップだったとき、星野監督から、それこそ耳がタコになるぐらい聞かされた言葉がありました。「先頭打者の四球は点が入るんやぞ!」ということでした。

 星野氏(現楽天SA)は「野球100年の歴史が証明している」と、おどろおどろしく続けたものです。実際、中日監督時代には「先頭打者の四球」に初めて罰金を科したという話もあり、今ではファンを含めた球界にすっかり定着した感もあります。

 もちろん苦しい戦いが続く現在の阪神でも同じのよう。中西投手コーチは「もう、それは常識だよな」と多くを語りません。

 とはいえ、日々野球を見ている側にすると正直、本当かな? という思いもあります。四球でも、安打でも走者が出るのは同じ。投手を中心にした守備側にすれば、同じように不利になるわけですから、ことさら四球だけを取り上げるのは不思議にも思います。実際はどうなんでしょう。

 今季、ここまでの阪神の戦いを参考に日刊スポーツ記録部に調べていただきました。

 〈先頭打者四球出塁〉

 阪神は38回中、11回得点、得点合計13点

 相手は36回中、11回得点、得点合計21点

 〈先頭打者単打出塁〉

 阪神は88回中、29回得点、得点合計50点

 相手は104回中、41回得点、得点合計84点(14日終了現在)。

 阪神の走者が四球で出て、得点する確率は2割8分9厘、単打で出た場合は3割2分9厘。

 相手走者を歩かせた場合に得点される確率は3割5厘、単打を許した場合は3割9分4厘となりました。

 少ないサンプルですが、どちらかといえば四球よりも単打されて走者を出した、あるいは単打で出た場合の方が多くなっています。

 こうなると、実際にマウンドに立っている人に聞いてみたい。若いけれど理論派で知られる藤浪に聞いてみましょう。どうなんやろか?

 藤浪 それは四球の方がダメだと思います。安打は好打者でも3回に1回しか出ないものですよね。前に打球が飛べば守備陣のファインプレーが出るかもしれないし、アウトにできる可能性が増えます。四球で走者を出すのは、その可能性を自分で放棄していることなります。

 そういうことか。確率以前に四球は、投手の闘争心を含む試合の流れにかかわってくるということでしょう。猛虎投手陣には歩かせるより、向かっていって打たれる方がいいという気概で、リーグ戦再開後もお願いしたいところですな。