第96回選抜高校野球大会が18日、甲子園で開幕した。前回大会では選手全員による行進、声出し応援などが4年ぶりに復活。今年の開幕前にはキャプテントーク、甲子園練習が5年ぶりに実施された。コロナ禍を経て、徐々に本来の姿に戻ってきた。取材も100%ではないが、ほぼコロナ前の状況に戻りつつある。

個人的には高校球児の熱い戦いが生み出す「ドラマ」を心待ちにしている。プロ野球担当から1月にアマチュア野球担当になるまで、高校野球の現場は数えられるほどしかなかった。その中で強く記憶に刻まれているのが、夏の甲子園切符をかけた14年7月27日の石川大会決勝戦、星稜-小松大谷のゲームだ。

当時入社1年目で、営業系の部署に所属していた私は北陸担当を務めていた。大会の運営に携わる朝日新聞販売店のお手伝いとして、石川県立球場にいた。試合は9回表まで0-8で小松大谷がリードし、バックネット裏から戦況を見守っていた私も「小松大谷優勝」の号外を配る準備を進めていた。

誰もが予想しない幕切れが待っていた。先発で3回6失点だった星稜の岩下大輝投手(現ロッテ)が9回に再登板し、3者連続三振で流れを引き寄せた。9回裏には岩下自らが左越えの場外2ランを放つなど、あっという間に8点差をひっくり返し、星稜が劇的なサヨナラ勝ちを収めた。

全国的なニュースとなった伝説の試合の現場に、日刊スポーツの社員は私1人。ただ、記者ではないため取材には目もくれず、興奮冷めやらぬまま号外をひたすら配布していた。現場に社員がいたことが徐々に社内に広がり、「なぜ取材をしなかったのか」と先輩記者に怒られたのは余談だ。

何はともあれ、「ドラマ」は互いに勝利への執念をぶつけ合い、最後まで諦めないからこそ生まれる。野球はゲームセットまで何が起こるかわからない。この春、新たに語り継がれていく「ドラマ」の誕生が、楽しみで仕方ない。【アマチュア担当=古財稜明】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

開会式リハーサルで甲子園球場のグラウンドを行進する星稜ナイン(撮影・上田博志)
開会式リハーサルで甲子園球場のグラウンドを行進する星稜ナイン(撮影・上田博志)
開会式リハーサルで行進する星稜(撮影・上山淳一)
開会式リハーサルで行進する星稜(撮影・上山淳一)
センバツ開会式のリハーサルで行進する星稜の選手たち(撮影・浅見桂子)
センバツ開会式のリハーサルで行進する星稜の選手たち(撮影・浅見桂子)
開会式リハーサルで整列する選手たち(撮影・上田博志)
開会式リハーサルで整列する選手たち(撮影・上田博志)