巨人の35歳・梶谷隆幸にやられたような試合ではある。3回、1死一、二塁で阪神森下翔太の当たりは右中間を襲った。これに右翼・梶谷が飛び込み、バックハンドで好捕。二塁走者・近本光司がすかさず戻ったのは当然として、2点目を目指すべく猛然と走っていた中野拓夢は一塁に戻れず憤死。痛い併殺となった。

「痛い」と書いたが、痛すぎるのだ。勝負に「たられば」はないとはいえ、あの打球が抜けていれば展開はまったく違ったはず。その梶谷が5回に青柳晃洋から2ラン。この回、自身のボークから野選で1失点した後だっただけに、青柳にもチームも、そして虎党にとってもガックリくるシーンとなった。

指揮官・岡田彰布もまったく同じ見方だ。「流れ変わったな。梶谷のところな。(抜けていたら)そら、大違いやろ。(本塁打も)結局、梶谷になったからのお」。試合の流れを重視する指揮官にしても痛すぎる展開だったということだ。

それにしても対照的な試合ではあった。殊勲の梶谷はもちろん、8回にダメ押し4点目の適時打を含む3安打の丸佳浩はいずれもセ・リーグの他球団から移ってきたFA戦士である。

対して阪神のスタメンは全員が国内選手の生え抜きときた。これは開幕戦に限れば72年以来52年ぶりのことで、加えてクリーンアップはドラフト1位のそろい踏み。球界の盟主として他球団からの補強を積極的に行ってきた巨人と、その路線を歩みかけたこともあったが、現在は生え抜き路線を進む阪神というハッキリした対比である。

別にどちらがいいというものでもないとは思うが、生え抜きをそろえて鍛えた方がファンは長い期間、楽しめるような気はする。もっともこの日、その「ドラ1クリーンアップ」は戸郷翔征から始まる継投の前にそろって音無しに終わったのだけれど-。

いずれにせよ大事なのは敵将・阿部慎之助を筆頭とする新生巨人を波に乗せないことだろう。ベテランのビッグプレーにルーキーもかみ合って、巨人サイドからすれば理想的な勝利のはず。勝利監督インタビューでも言わなきゃ仕方がない…という感じで「最高です」とおなじみのセリフを口にしていた。

このまま2戦目、さらに3戦目とつながれば、それこそ岡田が警戒する巨人を走らせることにつながりかねない。ここは流れを切りたいところだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 5回3失点で降板した青柳は首をかしげながらベンチから引き揚げる(撮影・上田博志)
巨人対阪神 5回3失点で降板した青柳は首をかしげながらベンチから引き揚げる(撮影・上田博志)
巨人対阪神 5回裏巨人2死二塁、右越え2点本塁打を放つ梶谷。投手青柳(撮影・河田真司)
巨人対阪神 5回裏巨人2死二塁、右越え2点本塁打を放つ梶谷。投手青柳(撮影・河田真司)
巨人対阪神 5回裏巨人無死、二塁打を放った吉川に拍手を送る阿部監督(撮影・上田博志)
巨人対阪神 5回裏巨人無死、二塁打を放った吉川に拍手を送る阿部監督(撮影・上田博志)