延長戦で試合の早期決着を図る「タイブレーク方式」が、今春の全道高校野球大会で初めて導入される。北海道では延長13回から開始し、無死一、二塁で任意の打者から攻撃に入ることが決まった。現場からは「野球が変わる」との声が多い。今日8日には、函館地区予選がいち早く開幕し、全道へ向けた戦いが始まる。“タイブレーク元年”となる今年、各校の反応を追った。

 昨年9月、札幌市内の私立校が集まって練習試合を行う私学交流会。札幌光星-札幌山の手の試合で「その時」はやって来た。ちょうど、タイブレーク方式の導入へ向けて、日本高野連が本格的に動きだした時期とあって、インターネットで情報収集した上で、9回で試合が決着しなかった場合、10回無死満塁から攻撃を始める形式を採った。

 延長10回、先攻の札幌山の手が2点を勝ち越したが、その裏、併殺を避けながら確実に3点を奪うため、俊足で左打ちの2番打者から攻撃を始めた札幌光星がサヨナラ勝ち。勝った合坂真吾監督(39)だったが「それまでの試合の流れが、まったく関係なくなってしまう。サッカーのPK戦みたい」と“怖さ”を感じた。9回にリードを追い付かれ、勢いは相手にあったからだ。

 その後、札幌光星は、昨秋の全道で4強入りした札幌日大にも、タイブレークで勝利。この時は先攻で4点を挙げたため、守備では長打のみ警戒で極端に深いシフトを敷き逃げ切った。「相手は打力があるので、前進守備は最初から捨てた。先攻だと、点差を考えて守れる。うちみたいな弱者が強豪とやるなら、先攻も“あり”かなと思った」という。「点差によっては内野を5人で守るチームも、出て来るでしょうね」。95年夏の甲子園決勝、サヨナラのピンチで観音寺中央(香川)が見せた奇策が、頭をよぎった。

 実際に2試合を経験したことで、普段の練習から、選手に対して、より状況判断を意識させるようになった。紅白戦では8回まで同点なら、9回はタイブレークを検討。冬場にグラウンドの雪を踏み固め、点差を設定したケースノックなどでタイブレーク対策を講じてきた旭川工のようなチームもある。

 一方で、圧倒的に多かったのが「全道出場が決まってから準備する」派だ。特に、攻撃面では、チームの形がはっきり見えてからでないと、対策は難しい。先の交流会でタイブレーク導入を提言した札幌第一の菊池雄人監督(42)は「(実際に導入される)無死一、二塁の時に、攻撃でも守備でも、チームとして、どう対応するのか明確にしたい。攻撃については打順が決まってからの作業」と話す。昨夏の札幌地区予選では、札幌清田と延長15回の末、引き分け再試合を経験。「走者が出るかを含めて野球。(タイブレークは)試合の均衡が一気に崩れてしまう」と懸念しながらも、今春の地区予選を戦いながら、対応策を固めていくつもりだ。【中島宙恵】

 ◆タイブレーク導入の動き 昨春の関東、北信越大会で初導入され、昨年7月に日本高野連が全加盟校に対してタイブレーク方式についてのアンケートを実施。議論を重ねた上で、同高野連は同11月に行った理事会で、15年春季地区大会のみ一律で導入することを決定、今年3月に承認した。地区大会の予選にあたる都府県大会や北海道地区予選については、各都道府県連盟の裁量に任されており、東京などでは実施。北海道や神奈川などは、予選レベルでの導入を見送った。また、開始イニングについては<1>延長10回<2>延長13回があり、各都道府県連盟が選択。タイブレークについて懐疑的な意見が多かった北海道では、<2>を採用した。