野球版「スクール☆ウォーズ」の軍団が、2回戦で燃えつきた。9回1死三塁。大阪偕星学園の夏の終わりを告げるサヨナラ打が、中前に弾んだ。それでも前半で4点差をつけられながら接戦に持ち込んだ。球場入り直前にふくらはぎ肉離れを負った右足を引きずりながら引き揚げてきた山本晳監督(47)は「チームのために1つになってくれた。求めてきた理想でした」と声を詰まらせた。

 進学でつまずき、野球も思い通りにいかず、挫折した選手が立ち直り、持てる力を燃やし尽くした。夢をつないだのは姫野優也(3年)だった。7回、2ストライクを取られたあとは指3本分バットを短く持つ打法で、一時は勝ち越し弾になる26号を左翼スタンドにたたき込んだ。「ダイヤモンドを回っているときは、最高で幸せでした」。足の不調もあり、マウンドには立てなかった。だが強打者の能力を甲子園で証明した。

 中学時代から名前を知られた野球選手だった。だが進学先の天理(奈良)を1年春にやめ、工事現場などで働きながらひと夏遊びつくした。情熱をもてあまし、父勝之さん(46)にめちゃくちゃに叱られた。「どこまで親を苦しめるんや…」の言葉が胸に刺さった。再生を誓い、1年9月に大阪偕星学園に編入。脱線しかけたときは、熱血の監督とチームメートが引き戻してくれた。「高校野球は人生で1度しかない。遊んでいたときより今の方が楽しかった」。プロ注目の選手になった高校最後の夏、敗戦でも姫野にはお立ち台が待っていた。【堀まどか】