宮崎大会でプロ注目の投手が明暗を分けた。都城商の最速144キロ右腕・森遼大朗投手(3年)は、プロ野球スカウトが「九州の高校生で一番きれいなフォーム」と評す投球で5安打2失点の完投勝利を挙げた。

 森がプロ絶賛の華麗なフォームで初戦を飾った。最後の打者を空振り三振に仕留めると、声を上げて右手でガッツポーズするほど気力が充実していた。「力が入ってうまくコントロールできなかった。今日は70点」と謙虚に応えたが、9回2失点。「3回戦もチームに勢いをつける投球をしたい」とエースの自覚は十分だった。

 巨人など国内プロ4球団が見守る中、ロッテ山森スカウトが「ポテンシャルは高い。九州の高校生で一番きれいなフォーム。一9番安定していると思う」と評する片りんを見せた。1回、四球と自らの失策でいきなり無死一、二塁のピンチを招いた。だがここからが真骨頂だ。絶対の自信を持つスライダーで空振り三振、一邪飛と2死を奪う。その後失策から2死満塁として迎えた6番打者に、この日最速の137キロ。最後はスライダーで切り抜けた。

 「試合をつくるため丁寧に低めに投げ、打たせて取る投球を意識しました」。3回に暴投などで2点を失ったが、4回以降は「しっかり流れを持ってこられた」と1安打に封じた。6月から投球の幅を広げるため本格的に習得したツーシームを多投。河野真一監督(45)は「4回以降はリズム良く、追い込んだら振らせられる変化球が良かった」とたたえた。

 そのツーシームを得意球にするオリックス金子にあこがれている。投球の連続写真を見て「下半身の使い方をイメージしています」と参考にしてきた。筋力トレーニングや食事量の増加で、冬場から6キロ体重が増えて76キロに。入学時は最速125キロだった球速も上がり、6月に最速144キロを記録した。将来の目標はもちろんプロ入りで「夏の大会の結果次第ですが、行けるなら高校を出て行きたい」と夢を描く。「宮崎の金子2世」が09年以来3度目の夏の甲子園出場へ燃えている。【菊川光一】

 ◆森遼大朗(もり・りょうたろう)1999年(平11)4月22日生まれ、宮崎県都城市出身。五十市小4年で軟式野球を始め五十市中で軟式野球部所属。都城商では1年春からベンチ入りし2年秋からエース。変化球はスライダー、ツーシーム、カーブ、スプリット。180センチ、76キロ。右投げ左打ち。