傷だらけのトラだ。上本博紀内野手(28)への頭部死球を巡り両軍もみ合いとなったDeNA戦も結局は自滅の失点が響いて打ち負け。借金4の5位で、セ・パ交流戦に臨む。首位DeNAにやりたいようにやられた横浜遠征は1勝2敗。西岡の負傷離脱、呉昇桓の体調不良だけでなく、上本は救急搬送、代役三塁の新井まで膝を痛めるなど不安なダメージが止まらない。

 鬼もビビる形相だった。和田豊監督(52)がこれほど感情をあらわにするのは珍しい。ビハインドゲームが荒れに荒れたのは3点を追う9回だ。DeNA守護神山崎康が投じた初球はすっぽ抜けて先頭上本の左側頭部を直撃。倒れ込むと指揮官がすぐに飛び出し、捕手の嶺井に詰め寄ってなじった。

 両軍が入り乱れて怒号の応酬。平田ヘッドコーチが声を荒らげ、山田バッテリーコーチはDeNA坪井コーチに制止される。中畑監督も怒り渦巻く輪に入る。和田監督も面と向かって感情を爆発。つかみかからん勢いで敵将とやり合った。

 もみ合いが鎮まり、試合を再開すると、DeNAの救援陣が四球を連発。それでも1死満塁で鳥谷が押し出し四球を選ぶのが精いっぱい。後続が倒れ、後味の悪さだけが残る敗戦だ。

 間もなく、和田監督の会見が始まると中畑監督が謝罪に訪れる。「ごめんなさい。悪かった!」。DeNA川村投手コーチも頭を下げに来た。指揮官も歩み寄って和解したが、敗れた悔しさは消えない。

 敗軍がバスへと引き揚げるなか、三塁側ベンチ裏は騒然としていた。ロープが張られて歩行者の通行を規制。上本は救急車で搬送されていった。検査で異常はなく、横浜市内のホテルを出る際も「大丈夫です」と平静を装ったが、魔の横浜遠征になってしまった。

 22日には西岡が右肘を負傷して戦線離脱。23日には呉昇桓が体調不良で参戦できず、悪化して、この日もブルペン待機しなかった。和田監督は「昨日より状態が悪かったんで。ちょっとまだ、明日の状態を見てということになる」と表情を曇らせる。熱は下がらず、26日のセ・パ交流戦開幕までに回復するか微妙だ。

 西岡に代わって三塁を守る新井も膝を痛め、足を引きずりながらバスに乗り込んだ。思えば1回に3点を先制しながら、先発岩貞や桑原ら投手陣の四球連発で自滅した戦い。和田監督は「レギュラーシーズン、セ・リーグの戦いはひとまず置いておいて、明日から新鮮な気持ちで戦いたい」と前を向くが、故障者続出で陣容は乱れる。昨季も9勝15敗と苦戦したセ・パ交流戦に、不安を抱えながら臨む。【酒井俊作】