頼もしい4番が帰ってきた。日本ハム中田翔内野手(26)が、復帰即タイムリーで勝利に貢献した。右足首を痛め、ここ2試合はベンチからのスタートを余儀なくされていたが、ロッテ18回戦で3試合ぶりにスタメン出場。4打数2安打1打点と気を吐いた。主砲の活躍に呼応するようにチームも毎回の12安打9点の猛攻を見せ、首位ソフトバンクとの差を8・5に縮めた。

 痛みの残る右足に重心を残し、中田が「代名詞」のフルスイングで、かっ飛ばした。6回1死一、二塁。左翼線を破った2本目の安打は、追加点を生む貴重な適時打。右足首痛から3試合ぶりにスタメン復帰し、4番の仕事を務め上げた。「痛みはあるけど、試合に出られないような痛みじゃない。(打線が)つながってくれたんで、良かった」。“つながった”のは太い眉毛もだ。試合後には、サインペンで杉谷の顔面にいたずら書き。試合の中心に、笑いの中心に、中田がいた。

 4回の四球を含め、3度の出塁はすべて本塁まで生還した。「あれくらいのレベルなら走れる」。全力疾走はできないが、1つでも先の塁を目指した。打線は12安打で9得点。栗山監督は「翔が4番に入ると、選手たちが自分の役割が明確になる。翔の存在が大きい。ナイスゲーム」と称賛した。

 先月30日までのソフトバンク3連戦中2試合は中田を休ませ、1勝1敗1分け。ゲーム差を詰められずに終えた。福岡から東京へと移動し、1日休養日を挟んだ。栗山監督は自問自答を繰り返していた。「2試合使っていたら勝ってたのかな…」。狙うのは奇跡の逆転優勝のみ。互角の勝負を演じながら勝ちきれなかったことを振り返り、思考は答えのない迷路にはまりこんでいた。

 だが、この日の結果がすべてだった。選択は、正解だった。同監督は「今日を見ていると、我慢したかいがあったと思えた」。勝負が決する9月。主砲・中田がラインアップに戻り、奇跡を予感させる大勝発進となった。

 この日敗れたソフトバンクとは、まだ8・5ゲームの差がある。だが直接対決も7試合残しており、絶望するような数字ではない。チーム状態は、確実に上向いている。指揮官と4番は、口をそろえた。「これを最後まで続けていけるように」(栗山監督)「こういう試合を1試合でも続けていきたい」(中田)。ビールをかけ、宙を舞う。可能性はまだ、残されている。結末は誰も分からない。【本間翼】