日本ハムが劇的な5連勝で、クライマックスシリーズ(CS)へ2位で進出を決めた。西武先発の岸に5回まで無安打無得点も、奇跡は5点を追う6回。1本塁打を含む6安打を集中し、今季1イニング最多7点でひっくり返して逃げ切った。5点差以上の逆転劇は今季初。栗山英樹監督(54)は就任4年目でシーズン最多75勝目のメモリアル白星で節目を飾った。まずは覇者ソフトバンクへ、絶好の位置で挑戦権を得た。

 目尻を下げることなく、猛攻のムチを入れ続けた。栗山監督は刻まれていく1点の感傷を捨て、勝負に徹した。5点を追う6回。CSで対戦の可能性がある西武岸に5回まで無安打も突如、兵が踊った。レアードの逆転の決勝3ランを含め6安打で7得点、今季の最大の逆転劇が完成する起点になった。2位を確定させ、前を向いた。「はっきりした道が見えた。万全の準備をしていきたい」。

 傷んでいた心が、少し救われた。勝負の9月を迎えた、ある夜だった。ソフトバンクの優勝マジックが激減。今季の夢の終わりを、現実として受け入れ始めた時だった。遠征先から、居住する栗山町の自宅へと深夜に帰宅。サポートする人たちが、夕食を準備した。気遣ったメニューは、のどごしが良い、そうめん。栗山監督は1度は、はしをつけ食べ始めたが直後、固まってしまったという。

 しばし放心。視線を宙にさまよわせ、1人の世界に入り込んだという。戦力に手応えを感じ、3年ぶりリーグ制覇を公言していた1年。気持ちの整理がつかず、V逸が決定直後も、辺り構わず周囲へと問いかけた。「もうこれから、いくら頑張っても優勝できないんだよね?」。17日にライバルがパ制覇を決め、3日後。2年連続のCS、昨季の3位を上回る2位が確定。再出発の足場を固めた。

 ケジメの1勝。監督就任後4年目で、シーズン最多75勝目。節目が重なった。リーグ優勝した就任1年目の12年を1勝上回ったが、素知らぬ顔だった。「そうなんだ。でも関係ない」。10月10日から本拠地で第1ステージを戦い、打ちのめされたソフトバンクに再挑戦する次なる目標。今日21日から、その宿敵を札幌ドームで迎え撃つ。「試したいことがいっぱいある」。逆襲ドラマの予兆にしたい白星。大勝負へ、かじを切り直す。【高山通史】