火事場のくそ力じゃあ~。崖っぷちの広島が4連勝でマジック1のヤクルトを破り、目の前での胴上げを阻止した。試合前まで今季2戦2敗で無得点が続いていた館山を5回の1発攻勢で攻略。追い上げられた終盤には、途中出場のルーキー野間峻祥外野手(22)の適時三塁打で突き放した。負ければ自力でのクライマックス・シリーズ進出が消滅する試合で意地を見せた。

 今季何度もやじを浴びせられた神宮球場のファンから、広島ナインは拍手で送り出された。劣勢の中盤に丸が、エルドレッドが、広島ファンが待つ左翼席へ1発を放り込んだ。終盤には新人の野間がダメ押し打。先発野村からヒース、大瀬良、中崎とつなぎ、ヤクルトの反撃をしのいだ。全員野球で勝ちきった指揮官は試合後、歓声を背に誇らしげだった。

 緒方監督 選手は胴上げを阻止しようとしていたし、うちも目標を持って戦っている。投手も野手も絶対に負けないという気迫を出してくれた。

 立ち上がり不安定な館山を4回まで打ち崩せなかった。今季2戦2敗の天敵に連続無得点に抑えられたイニングは、12年から4年越しで26に伸びた。1点ビハインドが重く感じられた。重苦しい空気を丸のひと振りが変えた。チェンジアップを捉えた打球は左翼席へ。広島ファンは総立ち。静まり返っていたファンのボルテージが上がった。

 丸 状況は違うけど、僕らも負けられない。首の皮1枚つながっている。勝つしかない。

 この日まで全138試合に出場し、休日も返上してトレーニングを続ける。タフな男が劣勢の展開で力を発揮した。球場の空気が変わり、1死一塁。エルドレッドが再び左翼席へ豪快弾。終盤、ヤクルトに1点差に迫られるも、途中出場の野間が左中間への適時三塁打で加点。最後は抑えの中崎が8回から2イニングを無失点に抑えた。

 広島は連敗で滑り出した12連戦を4連勝で締めくくった。勝った3位阪神との1・5ゲーム差を守るとともに、自力CS進出へ望みをつないだ。

 緒方監督 残り4試合。地元に帰って1試合1試合戦っていきたい。いい集中力を持って戦ってくれている。

 残り4試合。今季の象徴だった「混セ」の最終章として、最後までセ・リーグを盛り上げる。【前原淳】

 ▼阪神○、広島○の結果、両チームは1・5ゲーム差のまま。阪神のCS出場は最短で10月1日に決まるが、広島がCS進出を決める場合は10月4日の最終戦。CSが開始された07年以降、チーム最終戦でCS進出を決めたのは08年日本ハム、10年ロッテ、11年西武とあるものの、セ・リーグではまだない。ヤクルト、巨人に続くセ・リーグの3チーム目はいつ決まるか。