ベテランの一振りが、ロッテを2年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)に導いた。2-3の3回2死一、二塁でサブロー外野手(39)が左翼フェンス直撃の逆転2点適時打を放った。21年目の今季は出場機会が限られるが、大事な試合で勝負強さを発揮し、日本ハムを下した。チームは今季2試合を残し、3位が確定。10日から日本ハムとのCS第1ステージに挑む。

 どの瞬間よりも、歓声は大きかった。1点を追う3回2死一、二塁。サブローは、日本ハム谷元の外寄りのカットボールを引っ張り込んだ。左翼フェンス直撃で、二塁走者に続き、一塁走者も生還。フェンスは越えず「ノーパワーだね」とクールだったが、一塁上で声援に手を上げ応える口元は、かすかに緩んでいた。

 培った技術が逆転打を生んだ。前日の楽天戦は2三振を含む3打席凡退。約3カ月半ぶりのスタメンで結果を残せなかった。その前は、9月30日の日本ハム戦に代打で捕飛。打席自体が24日ぶりで「どうやって打ってたか、忘れた感じ」。経験豊富な男でも、感覚を失いかけていた。

 2試合連続スタメンのこの日、第1打席を犠牲にした。武田勝の120キロ前後に4球ファウル。最後はラッキーな中前打も、打ち取られていた。「皆さんには振り遅れと見えたかもしれない。軌道修正していた。引っ張りすぎを、右中間に戻すため。言い方は悪いけど、捨てた打席」。感覚を取り戻した当たりは、切れることなく、フェアとなった。「昨日、結果が出なかったのに。使ってくれた監督のファインプレーじゃないですか」と粋に話した。

 やっと今季36試合目だった。「そろそろ仕事しないと、忘れられる」とちゃかしたが、やることをやってきた。早めに球場入りし走った。ウエートトレーニングも増やした。「目は、どうしても衰える」と、器具を使って動体視力を維持。炭水化物を控え、肉中心の食事。8月だけで8キロ落とし、今も86キロをキープする。積み重ねが凝縮し、ここぞで結果に表れた。

 ロッテでは5年ぶりのCSに臨む。心構えを問われ「普段通りやること。CSだから、日本シリーズだから、じゃない」と即答した。勝負の術を知り尽くす男の言葉は、チームの指針となる。【古川真弥】