亜大が、勝ったチームが優勝の大一番で、逆転で国学院大を破り、3季ぶり24度目の頂点に立った。2点を追う6回に代打桝沢怜外野手(4年=八王子学園八王子)の同点打、宗接唯人捕手(3年=神戸国際大付)の勝ち越し2点適時打など、一気に4点を奪って競り勝った。最高殊勲選手賞はリーグ1位の5本塁打をマークした亜大・遠藤雅洋内野手(4年=聖光学院)が獲得。大学日本一を目指して、明治神宮野球大会(11月13日開幕)に出場する。

 病に苦しんだ男が青空に突き上げた両手が、歓喜の宴の号砲になった。亜大ナインが、クローザー花城直投手(4年=八重山)に向かってダッシュを決める。国指定の難病、黄色靱帯(じんたい)骨化症で、昨年5月に背中を約30センチ切る手術を行った。生田勉監督(49)は「野球は無理と言われて、はい上がってきた男。苦しい時は花城以外いない」。9回1死一、二塁のピンチを無失点で投げ切り、歓喜の輪に立った。

 6季連続優勝の栄光から、4位、5位と沈んで迎えたシーズン。今夏は4年生の団結を高めるためキャンプは下級生だけで行い、4年生は全員、亜大グラウンドに2週間残留した。春の課題を克服する暑く厳しい日々。MVP遠藤、最優秀投手の石塚賢次投手(4年=玉野光南)、花城ら主力4年生が力を蓄えた。

 22日のドラフトでは、藤岡裕大内野手(4年=岡山理大付)、北村祥治主将(4年=星稜)が指名漏れした。藤岡は泣き崩れ、翌日午前6時の練習でも涙が止まらなかった。傷心の2人へ、練習後に100人以上の部員が「フレー、フレー藤岡、フレー、フレー北村」の大合唱。4年生中心のサプライズエールに、藤岡は「チームメートが支えてくれた」と、また泣いた。

 2点を追う6回は、藤岡が二塁打で口火を切り、3安打で4点を奪って逆転した。チームは昨年オフから、現役時代の阪神金本監督らを指導した広島市のトレーニングクラブ「アスリート」のトレーナーを招き肉体改造。今季は遠藤の5本塁打を含む、リーグ1位の11本塁打を放った。今季限りで引退したOBの日本ハム木佐貫には、部員全員が数百円ずつ出し合い、紫のネクタイを贈った。そのネクタイを着けて観戦した先輩ら、歴代OBの前でつかんだ優勝。心優しく、屈強な男たちが、3季ぶりに「戦国東都」の頂点に返り咲いた。【前田祐輔】