2015年も多くの選手が球界に別れを告げた。「さよならプロ野球」で新たな人生を歩み出した元選手を紹介する。

 寮長と言えば、昭和の頑固おやじのような厳格な人が務めるイメージがある。だが今季限りで引退した西武平野将光投手(32)には当てはまらない。186センチの長身、端正な顔立ちで副寮長兼育成担当のポストに就いた。「まだ仕事を始めたばかりなので、分からないことが多いですね」。師走が迫る12月中旬、涼しい顔で笑っていた。

 若獅子寮で若手選手を束ねる。3~4日に1度、泊まり番が回ってきて点呼などを取って管理する。月に数度は勉強会も開催。監督、コーチの現役時代の歴史や栄養のバランスなど食育を伝えることも仕事の1つになってくる。「高校を卒業して入ってくる子も多いので、社会人として生きていくことを教えることが大切になると思います」と使命を自覚している。

 07年の大学・社会人ドラフト1位で入団。08年7月の楽天戦でプロ初勝利を挙げた。「初めて勝った時は印象深いですね。両親も見に来ていて、その前で勝つことができたので」。だが10年の4勝4敗を最高成績として、なかなか1軍定着できない年が続いた。そしてプロ8年目を終えた今オフに来季の契約を結ばないことを通達された。

 現役への未練はなかったのか-。「ありましたし、トライアウトを受けることも考えた。でも西武からもお話をいただきましたし、すぐに決めました」。完全燃焼できたのか-。「やりきりましたから」。第2の人生の出発点に立ち、平野は過去を振り返るつもりはない。【広重竜太郎】

 ◆平野将光(ひらの・まさみつ)1983年(昭58)6月28日、埼玉県生まれ。浦和実から平成国際大、JR東日本東北。社会人時代はソフトバンク摂津と2枚看板として活躍した。07年大学・社会人ドラフト1巡目で西武入団。1軍通算成績は60試合、6勝13敗1セーブ、防御率5・13。186センチ、88キロ。右投げ右打ち。