俺を見ろ!! 今秋ドラフトの超目玉、創価大の田中正義投手(3年=創価)が9日、東京・八王子市内の同大学グラウンドで始動した。全12球団から1位指名を受ける可能性もある最速156キロ右腕に、8球団10人のスカウトと約50人の報道陣が集結。立候補して主将に就任したエースは、周囲の「正義フィーバー」に惑わされることなく真っ向勝負を挑む。

 逃げも隠れもしない。味わったことのない多くの視線を浴びながら、田中のドラフトイヤーが幕を開けた。パ・リーグ全6球団と巨人、DeNAのスカウトに加え、テレビ6社を含む報道陣約50人が一挙手一投足を追った。「昨日から『(人数は)すごいよ』と聞いていても、ちょっと動じました」と苦笑いしたが、集中してキャッチボールやランニングに汗を流した。

 一流選手になるために、避けて通れない道だと自覚している。想像を超える注目度の高さに「プレッシャーに強くはないし、(取材などで)話すのも得意じゃない」と本音もこぼれた。それでも「これを乗り越えないと、プロでやっていけない。今のうちから経験できるとプラスに考えたい」。今年の目標を色紙に書いてほしい、という要望にも「字を書くのは苦手」と言いながら「大学日本一」としたためた。

 重圧を背負う覚悟は決めた。昨年11月、明治神宮大会の関東代表決定戦準決勝で敗れた日の夜、岸雅司監督(60)に新主将就任を直訴した。監督から「伸び悩む選手もいて、交代させたこともある」と言われても、揺るがなかった。「ダメになるなら、それくらいの選手だったということです」。勝負の1年は、すでに始まっていた。

 周囲の期待も冷静に受け止める。10年に早大で注目を集めた日本ハム斎藤の始動に集まったスカウトは、西武大石、広島福井と同学年にドラフト1位3人を擁して9球団だった。田中は「注目されようが、やることは変わらない。1度も負けずに終われたら、将来の道も広がる。リーグ戦から日本一まで14連勝できたらいい」と言った。マリナーズ岩隈も、親交のある岸監督に「大リーグでもやれる」と太鼓判を押した逸材。スポットライトを一身に受けながら、すべてに勝って運命の日を待つ。【鹿野雄太】

 ◆田中正義(たなか・せいぎ)1994年(平6)7月19日、横浜市生まれ。小1から野球を始め投手。創価高1年秋に外野手転向し創価大で投手に再転向した。昨春から東京新大学リーグ戦無失点記録を継続中。通算15勝1敗。家族は両親、兄、姉、妹。186センチ、91キロ。右投げ右打ち。