【ピオリア(米アリゾナ州)29日(日本時間30日)=木下大輔】メジャーの元本塁打キングの打撃が見たい! 日本ハム中田翔内野手(26)が、大リーグで本塁打王に4度輝いたマーク・マグワイア氏(52)に異例のお願いだ。今季から球団と業務提携を結ぶ米パドレスのベンチコーチに就任した同氏は、チームが現地滞在中にピオリアを訪れる見込み。同じスラッガーとして「打っているところが、見たいね」と、メジャー通算583本塁打のレジェンドの“実演指導”を懇願した。

 中田の本能が、うずいていた。現地入り2日目。現地時間2月1日のキャンプインに備え、自主トレとしてパ軍の施設を使っての初練習。天然芝が青々と光る快晴の中でフリー打撃を敢行した。46スイングで6本の柵越え。試運転としては上々の内容に「まあ、のんびりやっていけばいい」と、気持ち良く汗を流した。午前中に抜群の練習環境を体感し終えると、千載一遇のチャンスを心待ちにした。「来るらしいね、マグワイア」。

 メジャー通算583本塁打をマークしたレジェンドが、キャンプ地のピオリアに来訪する情報を球団スタッフからキャッチしていた。同じ右打者の長距離砲として名をはせたマグワイア氏は今季からパ軍のベンチコーチに就任。日本ハムが帰国後に同地でキャンプインするため、チームの滞在中に現地入りする予定とのことだった。

 異国でも中田節を響かせながら、初対面へ思いをはせた。01年オフに現役引退し、現在は52歳となった同氏に「もう、おじいちゃんでしょ?」と、ジョークを飛ばしながら、高まるテンションを表現。続けて、とっておきの願望を明かした。「どんなアドバイスを受けたいか?」という問いに「教えてもらうより、見たい。打っているところを、見たいね」と即答。言葉ではなく、目の前での“実演指導”を熱望した。

 メジャー施設を使うメリットを、目いっぱい生かす。中田にとっても、同氏の伝説的な活躍はインパクトが残っている。「1年で70本はエグイ。考えられへんわ」。カージナルスに在籍した98年、カブスのソーサとともに当時の大リーグ新記録となるシーズン70本塁打を記録した。現役引退後に筋肉増強剤のステロイドを使用していたことを告白したが、パワーだけでは数字を積み重ねられないことを中田も知っている。「見るのが勉強になるから」と、直で打撃フォームを見る絶好の機会に息巻いた。

 栗山監督も奨励する。「オレは聞きたい。(選手も)せっかくのチャンスだからね」と、積極的に同氏とコミュニケーションを取ることを期待した。指揮官の思いを心得る中田は「クソでかいんだろうなぁ」と、あこがれのスラッガーへの思いは高まるばかり。日米を代表するスラッガーの初共演が実現すれば、4番としてのステップアップへ向けた化学変化を起こしそうだ。

 ◆マーク・マグワイア 1963年10月1日、米国カリフォルニア州生まれ。84年ロス五輪代表として銀メダル。87年アスレチックスで新人記録のシーズン49本塁打、98年にカージナルスで当時の世界記録となるシーズン70本塁打。球宴選出12回、通算583本塁打。01年限りで引退。カージナルス、ドジャースの打撃コーチを経て、今季からパドレスのベンチコーチに就任。右投げ右打ち。