止めてくれるなおっかさん、阪神福留孝介外野手(39)のカウントダウンは、もう止まらんで。7回に完封を免れる意地の左前適時打を放つなど2安打した。もう何度目か(今季10度目)というマルチ安打で、日米通算2000安打まで残り15本と、偉業へ近づく足音が大きくなってきた。

 鋭い目のベテランが意地で1点をもぎ取った。7回2死一、三塁の場面。3番福留がロッテ石川の146キロを捉えると、あっという間にライナーが左前に弾んだ。

 「探っていても仕方がない。自分からどんどん振っていかないと」

 打てども打てども0点止まりだった右腕に、積極打法で得点を刻み込んだ。石川をマウンドから引きずり下ろした。

 「その瞬間」は確実に近づく。先頭で迎えた6回には石川の代名詞ともいえるシンカーを振り抜き、5試合連続となる安打を中前に運んだ。7回の左前適時打でマルチ安打は今季10度目。日米通算2000安打まで、あと15まで迫った。残り11戦となった交流戦期間中の到達も、期待せずにはいられない。

 華麗な守備、そして豪快なスイング。そのプレーの裏側には見えない努力が隠れている。4月には左太ももを負傷。それでも長期離脱だけは回避した。患部には2本分のテープをぐるぐると巻いてグラウンドに立った。本拠地の場合はデーゲームなら午前8時、ナイターなら午前10時には球場入りする。治療にストレッチにランニング。すべては1軍の戦力として役割を果たすための準備だ。

 交流戦の2戦目。1日の楽天戦前の練習では長い距離を走りながら打球を追いかける「アメリカンノック」に取り組むなど、足の状態は良化。それが、結果につながっていることは確かだ。

 「あそこで1本打てれば良かったんだけど、打てなかったというのが俺の力不足」

 悔やんだのはゲームセットの場面だ。9回2死二塁から守護神西野のフォークを打ち損ね、打球が跳ね上がり捕ゴロ。最後の打者になった。2安打1打点の結果にも、チームが負ければもちろん笑顔はない。すべてのヒットはチームの勝利のために-。百戦錬磨のヒットメーカーは、区切りの数字が近づいても淡々と安打を重ねる。【桝井聡】