日本ハム大谷翔平投手(21)が異次元の投球で5勝目を挙げた。「日本生命セ・パ交流戦」の阪神3回戦(札幌ドーム)は、意図的に初回から全力で飛ばし、7回を投げて160キロ台の直球が31球。自身が持つ日本球界最速記録163キロを5球マークした。交流戦史上初めてDHを解除して投手が打席に立った一戦。2打数無安打とバットでは結果を残せなかったが、7回3安打無失点と、マウンド上でゲームを支配した。

 たった1イニングで、空間を支配した。日本最速を誇る大谷が、初回から能力を解き放った。「今日は僕の中でも大事だと思った。最初から全力でいこうと決めていた」。西岡への3球目、前回登板で塗り替えたばかりの日本球界最速記録163キロをマーク。右翼席を占拠した虎党ですら驚嘆し、スタンド全体がどよめいた。続く4球目。やや高めに再び163キロ。最後はフォークで三振に仕留めた。先頭の鳥谷、3番ゴメスを含め3者連続奪三振。阪神ベンチに充満した苦笑いは、恐怖かあきらめか…。日本球界では例がない、極上の剛速球劇の幕開けだった。

 降板する7回まで、すべてのイニングで160キロ台を記録(163キロは5球)。直球58球のうち31球が大台を突破し、直球の平均球速は159・7キロと異次元の投球を見せた。イニング間に行う投球練習は、試合とは違うワインドアップ投法で投げた。「バランスとタイミングが、そっちの方がわかりやすいので」。ダイナミックな投球フォームを生み、腕は自然と強く振れた。

 10日のカード初戦でサヨナラ勝ちしながら、前日11日の2戦目に敗れた。「初回から飛ばそう」。敗戦を見て決めたという。「交流戦も後半に差し掛かってるし、(カードを)勝ち越すことも大事」。開幕投手を託されながら、5試合勝ち星なしでスタートした。「勝てなかったせいで、この順位になっている」。ソフトバンクには11ゲーム離された。チームを一気に上昇気流に乗せる快投を、自身に課した。「これを毎回続けることはできない」。正念場と位置づけ、特別に力を込めた。

 野手出場した8日広島戦で、右の背中に死球を受けた。直後は周囲の心配をよそにトレーナー室に近寄ることもせず試合に集中していたが、帰宅時には電気治療機を持ち帰り、しっかりと体のケアに努めてきた。打者では2打数無安打1四球。「打席では仕事をしていない。そっちの期待には応えられていないです」。本人は反省を口にしたが、交流戦史上初のDH解除という事実がかすむほど、圧倒的なマウンドだった。【本間翼】

 ◆大谷の投球内容 前例のない160キロオーバーを連発し、7回107球のうち直球58、スライダー28、フォーク16、カーブ5。直球のうち160キロ以上が31球。自身が持つ日本最速に並ぶ163キロは5度計測した。ストレートの平均球速は159・7キロだった。過去、160キロ超の1試合最多は12球。14年7月19日の球宴第2戦(甲子園)、同10月5日楽天戦(札幌ドーム)の2試合でマークしたが、ともに短いイニングに限定された登板でのものだった。