勝てる投手がいるからこそ「神ってる」進撃が続く。広島野村祐輔投手(27)が中日12回戦(富山)で6回3安打1失点の好投。両リーグ最速となる10勝目を挙げた。チームも貯金17まで積み上げ、2位との10・5ゲーム差も今季最大。今日6日、日米通算200勝がかかる黒田博樹投手(41)へ最高の舞台をお膳立てした。

 ピンチにも動じず、野村は軸足にためた力を使い、右腕をしならせた。2回無死一、三塁。福田を二塁併殺打に打ち取り、その間に先制を許したが、最少失点で切り抜けた。「ゴロアウトを多く取れたので良かった。失点はしたけど、ダブルプレーが取れて良かった」。3回以降は制球力が増し、無安打投球。中日大野との投げ合いに1歩も引かず、6回3安打1失点。7回に打線が勝ち越し、12球団最速の10勝目を手にした。

 初めて達成した3年前に比べ、2カ月以上も早く2桁勝利に到達した。昨年6月24日に阪神に4回途中5失点KOされた富山で好投した。「去年ふがいない投球をしたので何とかしたかった」と素直に喜んだ。

 ワインドアップからお尻を捕手側に見えるまでひねりながら左足を上げる。下半身の粘り強さが、球質向上の理由の1つ。昨季途中から下半身強化のトレーニングを継続。スクワット時のバーベルの重量は昨季の100~110キロから今季は120~130キロに増した。2回に桂、3回に大島の投ゴロをさばいた。捕球後、しっかりと右足1本で立ってから一塁へ送球。何げないプレーにも、意識が徹底されていた。

 昨季からともにプレーする黒田の影響が大きい。「気持ちの持ち方。準備の大事さを教えてもらった」。昨季は黒田のブルペン投球を捕手の後ろから見たこともある。3日のブルペンでは、黒田が野村のカーブを後ろから観察。「カーブがいいな」と握り方を聞かれた。尊敬する大先輩は今日6日、日米通算200勝のかかる登板を控える。試合前に「しっかり勝ち試合でつなげたい」と話した言葉通り、最高の形でバトンをつないだ。

 5月25日の巨人戦から自身6戦6勝と勢いが止まらない。前田(ドジャース)が抜け、大瀬良、福井が不在の先発で、柱に成長した。緒方監督は「相手のエースに勝てたことが大きい。後半戦は左のジョンソン、右の野村にフル回転してもらう」。期待が膨らむ右腕は「続けられるようにしたい」と責任感をにじませながら、コイの進撃の先頭に立つ。【前原淳】

 ▼野村が今季10勝目。広島投手の両リーグ10勝一番乗りは53年長谷川、82年北別府、95年山内、08年ルイス、12年前田健に次いで6人目。野村は5月25日巨人戦から6戦6勝となり、自身初の6連勝。広島投手の6連勝は13年前田の9連勝、バリントンの7連勝以来だが、両者は途中に勝敗なしの試合を挟んだもの。広島で6戦6勝は、06年7月2日~8月11日黒田以来10年ぶり。