猛攻を呼ぶ男だ。阪神原口文仁捕手(24)が、反撃のノロシを上げた。1点を追う4回。1死三塁で同点に追いつく中前適時打。5回1死満塁では走者一掃の二塁打。前日27日は5打点の活躍だったが、この日も4打点。この4連勝中は10安打12打点の貢献だ。

 あだ名の名付け親は先見の明がある。原口はこの日も神懸かっていた。力み過ぎず、それでいてインパクトの瞬間だけは力強く。フワッと浜風にも乗せた大飛球が左中間芝生に弾んだ瞬間、試合の行方は決した。

 「僕が打つ、打たないじゃなく、点差が広がれば幅広いリードができる」

 3点リードの5回1死満塁、小川の外角低めカットボールをすくい、走者一掃の二塁打だ。3安打4打点。連夜の大暴れで4連勝に貢献した。

 育成選手だった昨季、ひそかにあだ名をつけられていた。「神様」。原口が鳴尾浜で代打登場すると、一部の野手が「神が来た!」と声をあげていた。2軍で目を見張る成績を残せていなくとも、群を抜く打撃センス。同業者から「打撃の神」とあがめられた力は本物だった。

 「もちろん、今も大事に持っていますよ」

 4年前。度重なる腰痛に苦しんでいた夏、宝物を手に入れた。ある日、鳴尾浜の2軍施設内でトレーナー室に入ると、お目当てのマートンがいた。この年は打撃不振や舌禍騒動、首脳陣への造反劇もあって2軍降格を経験。原口からすればめったに接触できない「すごい選手」だけに、思い切って声をかけた。

 「サイン、もらってもいいですか?」

 「HARAGUCHIサンへ」。今も虎風荘の自室で大切に保管している。12年はウエスタン・リーグでも16試合しか出場できず打率1割8分9厘。シーズン終了後、支配下登録を外され育成選手となった。当時、マートンはサインをもらうほど雲の上の存在だった。あれから4年、原口は「安打製造機」に負けない存在感を漂わせ始めている。

 「(直前に三塁打を放った)福留さんの激走が心に響きました。絶対に、楽にかえしてやろうと思って」

 1点リードを許した直後の4回1死三塁では中前に同点打も放っていた。前日27日ヤクルト戦でも4回に先制3ラン&2点打。金本監督は「育成選手だったのが信じられないぐらいの活躍」と驚きを隠せない。

 「打つべきボールを打てているのかな、と思います。勝つことが一番です」

 4連勝中は16打数10安打の打率6割2分5厘、2本塁打、12打点。「神ってる」という表現を、少し借りたくなる。【佐井陽介】