ソフトバンクが江川智晃外野手(29)の値千金の今季1号ソロで首位に踏みとどまった。約3カ月ぶりに1軍に昇格し、「7番左翼」で先発出場。6回まで2安打無失点に抑えられていた楽天塩見から、7回に右中間席へ先制ソロを放った。得点力が上がらない中で起爆剤と期待されての起用に、見事に応えた。

 首位陥落の崖っぷちを、この日昇格したばかりの江川が救った。0-0の7回1死、塩見の外角フォークを右中間スタンドへたたき込んだ。「完璧です」。打った瞬間に右手を突き上げた。

 湿り続ける打線の切り札として、約3カ月ぶりに1軍に戻ってきた。打線は8月4日の西武戦で12安打をマークして以降、15試合連続で2桁安打がない状態。この日も6回までわずか2安打で無得点と突破口を見いだせない中で、貴重な1発となった。

 球宴休みのころに父から電話がかかってきた。「人よりグリップが上がりすぎやぞ」とアドバイスされた。調子が悪くなると上げようとばかりしていたところに逆の発想。下げてみると調子が上がった。今季から筑後にファーム施設が移転。2軍の試合もCS放送で中継され、離れて住む父からも突然のアドバイスがくるようになった。「筑後効果ですね。(父には)見とったか? と言いたいですね」と笑った。

 江川が打線に火をつけ5得点。前日23日の楽天戦で右足を痛め登板できない守護神サファテ不在の影響を受けない試合展開に持っていった。工藤監督も「よく打ってくれた。みんなへのきっかけとなる」と目を細めた。2軍のチームメートには2軍通算100号記念Tシャツを配るなど兄貴的存在の江川。「腐らず、僕がいい姿を見せないと。自分が活躍すれば勇気を与えられる」と話した。

 今年10月には30歳を迎える「ミスターファーム」が、苦戦続きでチームが忘れかけていた泥臭さ、元気を運んできた。【石橋隆雄】