阪神が金本全権体制を強化して、来季巻き返しをはかることが21日までに分かった。明日23日で中村勝広GMが66歳で急逝して1年を迎えるが、空位のままのGMや編成部長は当面置かない方針を確認。ドラフト、新外国人、FAなどの補強や組閣など来季構想は、2年目でチームを完全掌握した金本監督の考えを軸に進め、優勝に突き進む態勢を整える方針だ。

 阪神が金本全権体制を強化して優勝を目指す。編成面を取り仕切ってきた中村GMが66歳で急逝し、明日23日で1年になる。その後、代理の編成部長も置かず、そのポストは今なお空位のままだ。だが、球団は来季もGM、編成部長を置かない方針を固めたことが判明。金本監督が今季以上に編成面を切り盛りする形で、勝てるチームづくりを進めていく。

 球団内でもこの1年、現在凍結中のGM制の復活を検討してきた。だが、金本監督が進める超変革路線に、編成トップのGMを置けば、現場に混乱を来すかもしれないと憂慮。球団首脳は「金本監督が目指す野球に、船頭は多くはいらない。適任者もいない」とし、来季見送りが決まった。

 昨オフ、GM死去という激動の中、監督に就任したのは10月19日。だがそれはドラフト3日前でほぼ来季構想が固まっており、金本監督が抜本的なチーム作りを行う時間は多くなかった。新人や新外国人などの戦力補強は、中村GMが獲得調査してきた“遺産”を中心に球団が主導。金本監督もドラフト6位板山を指名した新人ルートや、ドリスを獲得した外国人ルートなど豊富な人脈を駆使したが、側面的な携り方だった。

 GMを置かない以上、金本監督が今オフの編成から本格的にGM的な職責を担うことになる。球団首脳は「監督も今年1年でチーム力を掌握できたはず。足りないところは自分で補えばいい」と説明。ドラフトをはじめ、新外国人、FA、トレードなどによる補強戦略、コーチ陣の組閣など、チームづくりをほぼ全面的に任せる。来季も続投が内定した和田豊オーナー付シニアアドバイザー(54)のアシストも受けながら、勝つチームづくりを目指す。

 金本監督は今季、Bクラス低迷の敗因に「打てなかったこと」を挙げるが、その打撃部門をどう補強していくのか。藤浪らが大誤算だった先発陣、不安定だった勝利の方程式はどう立て直していくのか。若虎を中心とする超変革路線は来季、主力も含めて金本色が色濃くなることは間違いない。もちろん、勝つためのベンチワークも求められる。編成と采配。2足のわらじで、勝負の2年目に挑む。

 ◆GM(ゼネラルマネジャー)プロ野球チームづくりにおける最高責任者。監督やコーチ、選手の人事権を持ち、選手獲得などを掌握する。選手補強面は、外国人獲得やドラフト戦略だけでなく、FA、トレードなど多岐にわたる。日本球界では、95年にロッテが広岡達朗氏を初めて起用。楽天マーティー・キーナート氏と三村敏之氏、日本ハムとDeNAでの高田繁氏、中日落合博満氏などといった例がある。阪神では、元監督でオリックスでもGM経験のある中村勝広氏(故人)を12年、球団史上初のGMに迎えた。