4年ぶりにパ・リーグの頂点に返り咲いた。日本ハム栗山英樹監督(55)が、就任5年目で2度目のリーグ優勝を果たした。1年目の12年とはひと味違う満願のリーグ制覇。

 奇跡を完結させた。日本ハム大谷翔平投手(22)が、歓喜の真ん中で両腕を突き上げた。「最後まで投げられてよかった。0に抑えることだけを考えました」。わずか1安打の完封劇。最大11・5ゲーム差からの大逆転劇を、圧倒的な存在感で締めくくった。

 超高校級と騒がれても日本一になれなかった。それはもう、過去のことだ。「冷静でしたし、自分を制御しながらできました」。フォークの調子が上がらない中、スライダーを生命線に配球を組み立てた。最速も159キロ。力ではなく技と頭脳で、今季最多15個の三振を積み上げた。

 米アリゾナキャンプ中の2月6日。栗山監督に呼ばれ、2年連続となる開幕投手を言い渡された。その席で、思わぬ言葉をかけられた。「オレに手紙を書きなさい」。昨年は手紙で開幕投手を伝えられた。今度は、逆だ。手元に紙が用意された。突然求められたものだった。だが大谷は迷うことなく、今季の目標、そのためにしなければならないことをしたためたという。

 同監督は常々「生き様として、自分との約束は絶対に守らなければいけない」と言う。大谷にも覚悟を決めさせ、自分自身と約束するという作業をさせたかった。先発ローテを外れた時期もあったが、防御率は1・86、この日3年連続2桁勝利にも到達した。打撃でも打率3割2分2厘、22本塁打。何より、シーズン残り2試合の土壇場で、チームを頂点へと導く最高の投球を見せた。あの日誓った約束を、最後まで守り通した証しだった。

 大谷 重圧がかかるマウンドは成長するポイントだと思う。優勝を決められて、最後まで投げられた。まだまだ成長できる要素になる。

 たどり着いた場所は、ゴールではない。この日の喜びが、大谷翔平をさらに大きくする。【本間翼】

 ◆大谷翔平(おおたに・しょうへい)1994年(平6)7月5日、岩手県生まれ。花巻東から12年ドラフト1位で日本ハム入団。14年は日本プロ野球初の2ケタ勝利&2ケタ本塁打。15年は最多勝、最優秀防御率、最高勝率、ベストナイン。今年9月13日オリックス戦でプロ野球最速の164キロをマークした。通算39勝13敗、防御率2・49。打者では通算229安打、40本塁打、135打点。193センチ、92キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸2億円。

 ▼大谷が15三振を奪ってプロ初の1安打完封勝ち。15奪三振以上で1安打以下の完封勝利は、16三振で完全試合の68年9月14日外木場(広島)16三振で1安打完封の01年5月24日野口(中日)に次いで史上3人目。パ・リーグでは初めてだ。リーグ優勝決定試合(プレーオフは除く)で完封勝ちは95年9月30日ブロス(ヤクルト)以来で、1安打完封勝ちは1リーグ時代の43年10月31日藤本(巨人)に次いで73年ぶり2人目の快挙。リーグ優勝決定試合で15奪三振は最多となった(2桁奪三振の完封は4人目)。大谷は今季10勝目。「2桁勝利+2桁本塁打」は、大谷自身が14年(11勝、10本)に記録して以来史上2度目だが、今年は104安打。ベーブ・ルースも達成できなかった「2桁勝利+2桁本塁打+100安打」をマークした。