4年ぶりにパ・リーグの頂点に返り咲いた。日本ハム栗山英樹監督(55)が、就任5年目で2度目のリーグ優勝を果たした。1年目の12年とはひと味違う満願のリーグ制覇。4番中田に代打起用、守護神増井の先発転向-。決して順風満帆ではなかったシーズンを英断の連続で乗り切った。

 体をぶつけるたびに、涙があふれた。栗山監督は、全員を抱きしめた。最後まで信じた選手たち。その手で、8度舞った。「感動しました。ファイターズの選手たちは北海道の誇りです」。最大11・5ゲーム差からの大逆転。指揮官ならではのタイトルをつけた。「『北の国から2016 伝説(誰もあきらめなかった)』だね」。最高の“キャスト”に支えられ、142試合目で感動のフィナーレを迎えた。

 革新的に攻め続けた。大きな決断の連続だった。6月、不振だった中田に代打を送った。12年の日本シリーズでは骨折していても外さなかった4番。ベンチに下げ、以降2試合も欠場させた。

 投手陣にも、次々と手を打った。調子が上がらなかった守護神・増井の先発転向。終盤戦にはマーティン離脱にともなって吉川をリリーフで起用した。すべて、チームの、選手のためだと考えた。

 今でも忘れない。昨年7月15日のソフトバンク戦。2・5ゲーム差を追う直接対決で、大谷を中継ぎ待機させた。本気で使うつもりだった。バンデンハークをKOし、5回を終わって1点のリード。だが、大谷の名がコールされることはなかった。実はこの日の朝、首を寝違えたと報告があった。重傷ではなかったが、悩んだ末、自重した。試合は逆転負け。この日を境にチームは下降線をたどり、最後は12ゲームも引き離された。「いまでもトラウマみたいになっている」。大きな決断の根底には、昨年の苦い経験があった。

 夏には所有する軽トラックが事故で廃車になった。12年の優勝パレードでは、荷台に乗って沿道に手を振った。思い出深い“愛車”だった。同車種探しは難航したが、今月ようやく納車された。新たな相棒の“初仕事”は、優勝パレードになりそうだ。「選手たちが一番、日本シリーズに置いてきた忘れ物を感じてくれていると思う。そこを目指してやっていきます」。4年前、巨人に敗れた悔しさ。感動のドラマには、まだ続きがある。【本間翼】