日本ハムの主砲がタイに導いた。「SMBC 日本シリーズ2016」第4戦は1点を追う6回、4番の中田翔内野手(27)が豪快な同点アーチを放ち、チームを活気づけた。先頭打者で、広島のルーキー岡田の初球スライダーを左翼スタンドに運んだ。日本シリーズでは4年ぶり2発目。8回には四球を選んでレアードの決勝2ランを呼び込んだ。チームは2連勝で対戦成績を2勝2敗の五分に戻し、今日27日の第5戦につなげた。

 夢の放物線が、左翼席へ向かって伸びた。日本ハム中田が、一振りで仕留めた。6回先頭。「変化球を狙って、投げミスが来ないかなぁと。ピッタリはまった。ラッキー」。初球、前の2打席でも見ていたスライダーが甘く入ってきた。迷いはなく、「打った瞬間に入ると思った」。打ちあぐねた広島のドラフト1位ルーキー岡田を、勝負をかけた読みと思い切りの良さで打ち崩した。

 頼りになる1発は、かわいがっている後輩も救った。4回2死一塁の守備で右翼の近藤が適時失策。試合中に声はかけなかったが、思いは共有していた。「ミスは誰でもするし、野手全員のミスだと思っている」。あふれんばかりのおとこ気が、同点弾につながった。不穏な空気も一掃した中田に、栗山監督も「ああいう時に全員を楽にしてあげる。アレが主役。アレが4番」とたたえた。

 肝が据わっている。8月中旬、長年使用してきたファーストミットのヒモが切れた。13年WBCの時に新調。世界の舞台でデビューさせ、今季で4年目。使用感の良さから、ボロボロになっても愛着を持って相棒としてきたが、限界だった。メーカーからの代替品は新品同様で皮が硬く、試合で使いながら軟らかくするしかなかった。今季8失策中、8月に5失策。ひそかに試行錯誤を繰り返していた。

 相棒は8月中には修理され、手元に戻ってきた。「やっぱり、これやな」。左手にはめ、感触を確かめてつぶやいたが…。試合では代替品を使用し続け、今に至る。メーカー担当者も「大丈夫でしょうか…」と心配したが、素知らぬ顔。グラブが硬かろうが、1度決めたら腹をくくる男。「(ミスを)やってしまったら、やり返す」。自分だけでなく、チームのためがモットー。前夜の逆転適時二塁打に続いて、信条を体現してみせた。

 8回には四球で出塁し、レアードの決勝弾につなげた。本拠地で連勝し、2勝2敗のタイとした。敵地で連敗スタートだったが「嫌なイメージは消すことが出来た」。今日27日の第5戦が、今季の本拠地最終戦。4番のバットで10年ぶりの日本一に王手をかけ、広島に乗り込む。【木下大輔】