コイが追い詰められた。広島は先手をとりながら、サヨナラ負けを喫して3連敗。奮闘してきた救援陣がまさかの誤算続きで、敵地札幌で崖っぷちに立たされた。緒方孝市監督(47)は「地元に帰ってもう1回。再度踏ん張らないと」と、本拠地マツダスタジアムでの逆襲、32年ぶり日本一を誓った。

 広島ファンの悲鳴が上がる壮絶なラストだ。同点で登板した守護神・中崎が西川に満塁被弾。この瞬間、シリーズ制覇に王手をかけられた。32年ぶり日本一の夢がかすむ一撃にも、緒方監督は落ち着いた表情で振り返った。

 「完全に相手を勢いづかせる流れになってしまったね。3試合、3連戦とも接戦で。最後は本塁打という形で終わったね」

 シーズンを戦い抜いた「勝利の方程式」を信じていた。前日に決勝弾を浴びたジャクソンを迷いなく同点の8回に送り出した。7回、同点にされた今村にも文句はなかった。

 プロ野球の監督が嫌うのは四球からの失点。接戦の中で、それが出た。第3戦は四球の走者を大谷にサヨナラ打でかえされた。第4戦もレアードの前に四球を出しての決勝被弾。避けたかった悔しさは、もちろんある。だが、それよりも自分の責任を口にした。

 「こっちに来てから四球からの失点があるのは、そうだけど。それ以前に自分の中で、何とか得点を取れるように、初回からの攻撃の中で何とかこっちに流れを持ってこれなかったのかなという思いはある」

 1回に「5番右翼」で起用を続ける鈴木が先制打。自身がシーズン中に与えた「神ってる」のセリフで有名になった男の一打だったが、打ち勝ってきたチームが大事な試合で「スミ1」に終わった。

 広島で連勝してから敵地3連敗。03年に王ダイエーと星野阪神が演じた「内弁慶シリーズ」に似る。逆転Vへは、広島で2連勝が条件。レギュラーシーズンで、本拠地ゲームは49勝20敗1分け。日本一への望みは消えていない。何より赤い声援が後押ししてくれる。今日28日、チャーター機で戻り、背水の陣に挑む。

 「地元に帰ってもう1回ね。再度踏ん張らないとね。もう1回勝ってつなげないと。その気持ちで」

 それ以上は言わなかったが、続く言葉は間違いなく「ファンに申し訳ない」だ。いずれにせよ、第6戦か第7戦に先発見込みの大谷を打ち崩すことが必要だ。緒方カープが今年最大の正念場を迎えた。【高原寿夫】