阪神金本知憲監督(48)が「恋人糸井」を一気に口説き落とす。阪神が10日、オリックスからFA宣言した糸井嘉男外野手(35)ときょう11日午後に大阪市内のホテルで入団交渉を行うことを発表した。指揮官は交渉への直接出馬に備え、10日に安芸キャンプから帰阪。「(必要)だから取りにいく」と、初めて肉声でラブコールを送り、獲得への強い意欲を見せた。

 金本監督はキャンプ地・安芸で練習を見届けると、スーツに着替えた。チーム宿舎から高知空港に急行。疲れた様子も見せず、空路で帰阪した。目的はひとつ。糸井に会うためだ。FA交渉の解禁日に指揮官自らが出馬する。いかなる口説き文句をぶつけるのか。「それは明日、明日。(必要)だから取りにいく」。短い言葉に、獲得への熱意を込めた。

 FA市場の目玉と位置づけながら、指揮官を含め、球団は糸井獲得に沈黙を続けてきた。その日が来ると、一転し、素早く動いた。午後3時にFA宣言選手として公示された1分後の3時1分に、電話で速攻のアポ取り。「すぐにお願いします」と快諾を得て、11日の入団交渉を取り付けた。

 FA交渉では複数回交渉し、最後の詰めで監督がテーブルに着くケースもあるが、金本監督は違った。「監督に出ていただくのが、一番の誠意。選手というのは、やはり監督の意向を直接聞くのが、一番の興味だと思う。具体的に言ってもらうのが、一番通じるのではないか」と高野球団本部長は出馬の意図を説明した。

 糸井は来年で36歳になる。ベテランの域に入るが、金本監督は自らと重ね合わせた。「まだバリバリできるのか」という問いに即答した。「そう判断しているし、よく体を鍛えている選手と聞いている。俺がタイトルを取った年だからね、(当時の)俺より若いと思う。躍動感があって、足もあって、長打力もある」。広島からFA移籍し、阪神を優勝に導いたのが35歳。翌年には、初タイトルとなる打点王に輝いた。今季、糸井は史上最年長で盗塁王を獲得。走攻守でチームの起爆剤となることを確信している。

 球団側はオリックスの4年総額18億円(推定)に匹敵する条件に、西岡がつける背番号7を提示する方針だ。金本監督の直接出馬による口説き文句が、何よりも武器になる。糸井獲得に盤石の態勢を敷いた。きょう11日午後、大阪市内の高級ホテルを舞台に、金本阪神が大きな一歩を踏み出す。【田口真一郎】