故郷への思いが阪神岩貞祐太投手(25)を突き動かした。今年4月に熊本地震が発生。新聞やテレビの画面には、変わり果てた故郷の風景が映し出された。

 「家の中とかグチャグチャみたいで。ちょっとパニックになってるみたいです。体は無事みたいですけど、うちの家も震源から近いところなので心配です」

 電話口から聞こえてくる家族の声は、想像していた以上に切羽詰まったものだった。親戚や知人が眠れぬ夜を送っている。練習中も携帯電話をチェック。余震があるたびに家族の安否を確認した。飛んでいきたい気持ちをグッと抑え、マウンドに向かった。

 今季は最後までローテーションを守り抜き10勝をマーク。巨人戦は4試合に登板して3勝0敗、防御率0・58。金本阪神の1年目に現れた「Gキラー」は、強烈な輝きを放った。

 シーズン終了後には、「熊本のため少しでも力になれれば」と、来季から白星か奪三振に応じて復興にあてる支援金を寄付する考えを表明した。年末には熊本出身のプロ野球選手がそろって野球教室も行う。昨季まで通算2勝の左腕が、愛する故郷に勇気を与える存在になった。【阪神担当=桝井聡】