「武蔵魂」で勝ちまくる! ヤクルト山中浩史投手(31)が、年明けに地元熊本市内にある雲厳禅寺の霊巌洞を訪問し、勝者のメンタリティーを手に入れる。今季は先発ローテーションに定着も、6勝12敗と大きく負けが先行。生涯無敗の剣豪・宮本武蔵が「五輪書」を書いたとされるパワースポットで、自身初の2ケタ勝利を誓う。

 サブマリン山中は、飛躍の1年にも満足していなかった。先発の一角として小川に次ぐ140イニングを投げたが、6つの負け越し。チーム防御率は12球団最低の4・73に終わった。「今年は投手で負けたようなもの。(宮本武蔵には)60戦無敗の兵法があるので、あやかりたい」。最強剣士の心を身につけるため、宮本武蔵ゆかりの地へ足を運ぶと決めた。

 誰が相手でも勝つ。今季は阪神から3勝したが、広島と中日には1勝もできなかった。「苦手意識は持っていないつもりだけど、なぜか勝てなかった」と首をかしげた。宮本武蔵の「五輪書」には「兵法の道において、心の持ちようは平常の心と変わってはならない」という意味の一文がある。山中は「2ケタ勝つために、どこと戦っても勝負どころで打たれないようにする」。ピンチでこそ冷静に神経を研ぎ澄まし、地面すれすれの「下段の構え」から繰り出す投球術で抑え込むつもりだ。

 やれることは、やる。宮本武蔵も晩年に暮らした故郷は、4月14日の大地震で甚大な被害を受けた。熊本市西区にある雲厳禅寺は無事だったが、多くの人々が避難生活を余儀なくされている。今オフは既に地元に戻り、野球教室や仮設住宅の訪問など積極的に復興支援活動に参加。「僕の活躍で喜んでもらったり、頑張ろうと思ってもらえたらいい」。来季は神宮の年間チケットを購入し、「復興シート」として被災者を招くプランもある。

 負ける姿は見せられない。自主トレは「熊本で、1人でやると思う」。特定の師を持たなかったとされる「武蔵流」だ。「ローテーションを守って、信頼してもらえるようにしたい。投手陣がしっかりすれば、チームは上位に食い込んでいける」。120キロ台の直球と、さらに遅い変化球の「二刀流」に磨きをかけ、決闘に備える。【鹿野雄太】

 ◆雲厳禅寺(うんがんぜんじ)熊本市西区の金峰山の西麓に位置する。南北朝時代、日本に渡来した中国の僧が建立したと言われる曹洞宗の寺。奥に続く霊巌洞は、宮本武蔵がこもって「五輪書」を書いたとされる。隣接する宝物館には宮本武蔵の木刀、自画像などが収蔵されている。

 ◆宮本武蔵(みやもと・むさし)江戸時代初期の剣豪。武道修行のため諸国を歩き、二刀流を生み出した。剣のあり方を記した兵法書「五輪書」も執筆。特定の師を持たずに諸国を渡り歩き、剣の道を究めるために生きたともされる。佐々木小次郎との巌流島の決戦が有名。