V撃はまた原口だ! 阪神原口文仁捕手(25)が同点の8回、広島九里から決勝タイムリーを放った。チームは今季8勝目だが、6日のヤクルト戦でサヨナラ弾を放つなど、勝利打点は巨人阿部、広島新井と並ぶセ・リーグトップの3個目だ。ここ一番で燃えて打つ勝負強い5番が、2年目金本阪神の進撃を支える。

 またしても、この男が決めた。緊迫の投手戦に終止符を打ったのは原口のバットだった。同点の8回2死一、二塁、フルカウントからの6球目。ここまで猛虎打線を苦しめてきた広島九里のシュートをついに捉えた。打球は三遊間を抜け、二塁走者高山が生還した。値千金の決勝タイムリー。原口は一塁上でベンチに向けて右拳を突き上げた。

 「チーム全員とファンの皆さんの思いが、僕の打席にこもっていると思っていきました。この声援に応えたいという気持ちで、必死のパッチで打てました」

 それまで2打数無安打。チームが同点に追いついた3回には、なお2死二、三塁と勝ち越しの好機で凡退していた。再び巡ってきたチャンス。逃すわけにはいかなかった。「(4番の)福留さんが3ボールになった時点で、(四球で歩かせ)僕で勝負だなというのは感づいていた。勝負どころだと、分かっていました」。バットを指1本分短く持ち、コンパクトにスイング。最高の結果につながった。

 09年。阪神入団が決定した原口は、小学時に在籍していた少年野球チームの恩師にあたる人物と約束を交わしていた。「お前の2軍のサインはいらない。1軍で最初に出た試合のボールにサインしてもってこい!」。

 あれから約8年…。もはや忘れ去られていてもおかしくない月日だ。だが、昨年4月27日、育成から支配下登録されて1軍初出場した巨人戦の試合後。恩師が激励を込めて電話をかけると、思わぬ返事が返ってきた。「ちゃんと取ってありますよ」。原口は約束をしっかりと覚えていた。「約束したんでね」。誠実な男だからこそ、多くの人が彼の魅力にひきつけられる。

 5番打者として6日ヤクルト戦ではサヨナラ弾を放つなど、勝負強さが際立つ。チームの8勝中、勝利打点は早くも3個目だ。「(広島は)強いんで。昨日負けてしまったので、全員で今日勝ち越そうというミーティングだった。その通りになって良かったです」。シンデレラボーイが猛虎の中心打者へ。進化にはまだまだ続きがある。【梶本長之】