ボクサーのような俊敏性がこの男の最大の武器だ。ソフトバンク甲斐が、自慢の鉄砲肩で勝利をアシストした。初回に先頭荻野を四球で歩かせての1死後。根元の2球目に二盗を試みた快足男をベース約50センチ前で刺した。「この前の千葉でも荻野さんを刺しましたし、よかったです」。東浜の投球はカーブだったが、捕球から二塁到達まで1・72秒。球界屈指の強肩がピンチを断ち切った。

 1・8秒台でも十分と言われるプロの世界で、0・1秒近くも速い。最大の武器は相手打者心理も狂わせている。走者を背負うと直球系で外角中心の配球となりがちだが、甲斐のシグナルは違う。球速の遅い変化球でも強肩で十分に走者と勝負できるため、打者の配球の読みを惑わせている。

 「うまくアウトにできてよかった。あーいうのをしっかりとしていきたい」。汗だくの笑顔で振り返ったのは6回のプレー。先頭鈴木が三塁線に転がした打球を素早く処理し、矢の送球で捕ゴロに仕留めた。打っては7回に右越えのタイムリー二塁打。強肩&バットで東浜に5勝目をプレゼントした。【佐竹英治】