復活の剛腕が、エースの心意気を見せた。背中の張りのため登板回避していたソフトバンク千賀滉大投手(24)が日本ハムを8回1失点に抑えて6連勝を飾り、楽天則本と並びリーグトップに立った。緊急降板した16日オリックス戦(京セラドーム大阪)から中11日で復帰。8回も続投を志願し、中継ぎ陣を休ませた。チームは首位楽天と並ぶ今季30勝目。明日30日からは2年連続勝率1位の交流戦に臨む。

 約2週間、胸の中にため込んでいた申し訳なさを、エネルギーに変えた。背中の張りから復帰した千賀が106球を投げ、8回1失点の好投。勝ちが決まると、ベンチでホッと胸をなで下ろし、頬を緩ませた。

 「この2週間、先発、中継ぎの皆さんに本当に迷惑をかけていたので、とにかく長いイニングを投げたかった。7回か8回は絶対に投げなきゃいけないと思っていた。何事もなく終われてよかった」

 16日のオリックス戦では試合前のブルペンで左肩甲骨付近に張りがでた影響でわずか9球で降板。ローテ通りながら登板予定だった23日ロッテ戦を回避し、約1週間、電気治療などを続け、復帰を目指してきた。

 ほかの投手陣を休ませたい思いが強かった。前回の試合から前日27日までの11試合でリリーフ陣は延べ41人が登板。東浜、摂津は中5日、中田は中4日での先発を強いられた。和田、武田が故障で長期不在の中、チームに迷惑を掛けた分、恩返しの思いしかなかった。連日、先発投手には試合前に声をかけて激励。チームより1日早く札幌入りした25日には、初先発の大役を任された松本裕をすし店に誘い、リラックスさせた。

 そして中11日でようやく戻ってきた自身の復帰マウンド。背中の状態はまだ100%ではなく、この日は決め球のフォークが定まらなかった。「背中のこともあったし、フォームの問題もある」。かわりにスライダーを多様。その影響もあり、奪三振はわずか3だったが「感触があまりよくない中でも試合をつくれたのはよかった」と、結果にこだわった。

 レアードに1発を浴びた7回には足がつりかけていた。それでも、首脳陣から「もう1イニングいってくれると助かる」と言われると、迷わず「いきます」と即答した。「シーズン中にはあることだし、投げられる程度のものですから」。

 そんなおとこ気あふれる千賀の姿に、工藤監督も「変な張りもなく、無事投げられることができてよかった。内容もよかった」と、笑みを浮かべた。頼れる右腕の早期復帰。首位浮上を狙うチームにとって大きな1勝だった。【福岡吉央】