<オープン戦:ソフトバンク5-0阪神>◇3日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンク松田宣浩内野手(24)が「開幕5番」確定弾を放った。7回に阪神金村暁からオープン戦1号ソロ本塁打を左翼スタンドに突き刺した。4回には先制の右前適時安打を放ち、通算5打点はチームトップ。王貞治監督(67)は「今は一番、適任だと思っている」と開幕5番打者の筆頭候補に挙げた。小久保不在で巡ってきた開幕スタメンのチャンスだが、実力でクリーンアップの座をつかもうとしている。

 開幕5番の可能性を示すには、十分過ぎる打球だった。7回1死、カウント2―0。空振りを誘う高めのつり球を、松田は長距離打者の本能で仕留めた。「普通は打ちませんけど、体が反応しました」。理想的な形で、バットが自然と出た。「ジャストミートすれば飛ぶ、それが理想ですから」。描いた通りに打球は左翼スタンドに一直線で向かった。オープン戦1号。体を突き抜ける高揚感を表すように、松田は速足でダイヤモンドを1周した。

 早出特打から打法を修正していた。変化球を追いかける「手打ち」を克服するため、キャンプではバットを構えたときに重心を左足に置き、そこから始動する打ち方を練習した。実戦練習に入ると、ボールを見極める必要性を痛感。「球を長く見るため」と一転して、構えたときの重心を右足にしたが、今度は打つポイントが近くなった。「去年のいいとき、重心を両足で50対50にしていたのを思い出したので、それにしました。結果に関係なく今日は試そうと思ってた」。試行錯誤の末、自分に合った打ち方にたどり着いた。

 松田の一撃に、王監督は思わず苦笑いを浮かべた。「ぼやいてみるもんだな」。試合前練習中、王監督は松中が前日に放ったチーム1号本塁打を引き合いに、若手のアピール不足を指摘した。「オープン戦を7試合やって1本目がやっぱり松中だったじゃね。松中が打つのは当たり前で、こっちを驚かせるようなものが出てこない。求めないと本塁打は出ないが、若手にその雰囲気がない」。まるで前言撤回を求めるような松田の1発。王監督も「見事にスパっとバットが出た。ああいう打撃を覚えてくれれば」と絶賛した。

 これが4試合連続の5番打者だった。4回には2死二塁から先制の右前適時安打を放ち、オープン戦5打点は堂々のチームトップ。王監督は「今は一番、適任だと思っている。こういうのを形で示していけばね」と言えば、秋山チーフコーチも「可能性はある」と開幕5番打者の筆頭候補として認める。「この1本に満足せず、2本、3本と打っていきたい」と松田はさらなるアピールに必死だ。昨年、開幕戦で5番三塁を務めた小久保は、米国で左手首手術のリハビリ中。その代役で終わるつもりはない。3年連続オープン戦チーム1号弾は兄貴分の松中に譲ったが、5番の座はだれにも渡さない。【中村泰三】