<巨人5-4中日>◇10日◇東京ドーム

 巨人が98年4月15日以来の先発全員、毎回安打で中日を振り切った。1回、売り出し中の坂本勇人内野手(19)が左翼席へ3号先制弾。両リーグ防御率トップを誇った中日先発の吉見攻略の起点となった。守っても3回にダイビングキャッチするなど攻守で活躍した。8回にアレックス・ラミレス外野手(33)の左前適時打で試合を決めた。5得点中4得点が坂本、亀井義行外野手(25)脇谷亮太内野手(26)の打点で、生え抜きフレッシュトリオが勝利に貢献した。

 芸術的な技ありのひと振りだった。坂本が初回、吉見の2球目の内角速球に左ひじをたたみ、体の軸回転で左翼席へ運んだ。「思い切りしか考えていなかった。体が勝手に反応してくれました。気持ち良かったです」。4月8日の横浜戦以来、27試合ぶりとなる3号ソロ弾で1点先制。98年以来の先発全員で毎回安打をマークした打線の起爆剤となった。

 バットで先制パンチを放った後は、守備で渋い仕事が光った。3回、谷繁の低く鋭いライナーを華麗にダイビングキャッチ。8回2死三塁では、ウッズの左前へ抜けそうな打球を逆シングルでさばき、一塁で間一髪アウト。相手の勝ち越し点を防いだ。坂本は「抜かせないと思っていつもプレーしています」と、はにかんだ。同点の8回の攻撃では無死一塁から、キッチリ送りバントに成功。走者を進め、ラミレスの決勝打をアシストした形だ。「(バントが)今日一番うれしかった」と勝利へ貪欲(どんよく)な姿勢だった。

 「兄貴分」の先発野間口を勝たせたかった。実は6歳年上の坂本の兄と野間口は兵庫・伊丹シニアリーグのチームメート。親に連れられ兄の応援に行っていた坂本は野間口とは子供のころからの付き合いだ。十数年を経て同じグラウンドでプレーしていることを大切にしている。

 坂本は野間口から常々、アドバイスを受けている。最近も「勇人、簡単に凡退したりあきらめたりするのはやめよう。軽いプレーと言われないように。内角を攻められても逃げるな」と、言われたばかりだった。抜けそうな打球にもあきらめず、勝利へ執着する姿勢は、先輩の言葉と無縁ではない。

 これで巨人は20日からのセ・パ交流戦前のヤマ場である9連戦の勝ち越しを決めた。原監督は「粘り強く全員が1球のボールに集中した。亀井の四球、脇谷の粘り、そして(坂本)勇人の送りバント。目立たないけど、勝負の中で粘りが出ている」と活発に機能した打線に目を細めた。

 2回には3年目の脇谷が適時二塁打、4回には4年目の亀井が適時2点三塁打と、生え抜きの若手トリオが5得点中4点と効果的な打点を挙げた。坂本を筆頭に巨人の若い“DNA”が、いまひとつ波に乗れないチームに勢いをつけた。【宮下敬至】