<中日1-0ソフトバンク>◇26日◇ナゴヤドーム

 中日小笠原孝投手(31)が、今季1番の投球でチームを救った。この試合まで交流戦打率トップ3割3厘のソフトバンク打線を8回4安打無失点に封じ、5勝目をマーク。ウッズの12号ソロによる1点の援護を守った。激しい競争によりリリーフ、先発とめまぐるしく役割が変わる中、踏ん張り所で存在をアピール。連勝のチームは交流戦の勝率を5割に乗せた。

 小笠原は覚悟した。1-0の8回、1死から本多に中前打を許した。球数はすでに120球を超えていた。交代か-。だが、落合監督はベンチに座ったまま動かなかった。この日まで12球団最高の交流戦打率を誇っていたソフトバンク打線との息のつまるような試合を託された。開き直った。

 「びびって投げても仕方ない。後悔したくない」

 川崎を左飛で2死。打席に松中を迎えた。カウント2-0と追い込んだ。そして、最後は二盗を試みた本多を捕手の小田が強肩で刺してくれた。グラブをたたいてガッツポーズ。8回4安打無失点で今季5勝目を手にした。

 「100点まではいかないですけど、それに近い点数です。今年1番よかったと思います。ものすごい打線なんで気持ちで負けないようにした」

 140キロのキレのある直球とスライダー、スクリューを低めに決めた。交流戦前にはリリーフにまわっていた時期もあったが、交流戦から先発に復帰。交流戦での防御率がこの日まで4・50と悪化していた投手陣を救った。

 試合後、落合監督は小笠原への信頼を口にした。「(8回に)代える気はなかった。あの場面で投げさせる投手はいない。3点、4点あれば別だけど、試合が動かないと代えられない。本人も悔いが残るだろう。成長と言っていいんじゃないか。シーズン前は1番心配していた投手なのにな」。首位阪神とのゲーム差は4・5と変わらないが、本拠地でソフトバンクに連勝し、交流戦の勝率を5割に戻した。

 手に汗握る極上の投手戦を演じた相手は、ともに北京五輪代表候補左腕の和田。「すごくいい投手で参考になった。五輪?

 僕に聞かないでくださいよ。候補に選ばれただけで光栄です」。本人は謙遜(けんそん)したが、和田は制球ミスによる1発に泣き、小笠原は低めに投げきった。日の丸を背負う資格があることをピッチングが証明していた。【鈴木忠平】