日本プロ野球組織(NPB)は28日、東京・内幸町のコミッショナー事務局で緊急会見を行い、ヤクルトのダニエル・リオス投手(35)に対しドーピング違反で1年間の出場停止処分を科したと発表した。5月21日の西武戦(西武ドーム)で行われた検査で、同投手の尿から筋肉増強剤の一種として禁止物質に指定されているハイドロキシ・スタノゾロールが検出された。日本球界での摘発は昨年のガトームソン(ソフトバンク)、今年5月のゴンザレス(巨人)に続き3人目。ヤクルトは同日、セ・リーグに契約解除を申請した。

 ゴンザレスのドーピング発覚からわずか1カ月後、またもや日本球界で違反者が摘発された。リオスの尿から検出されたスタノゾロールは、88年にベン・ジョンソンが金メダルをはく奪される原因ともなった物質。筋肉増強剤で、体内には存在しない合成ステロイドホルモンとして禁止薬物に指定されている。覚せい剤に類似した興奮剤を使用したゴンザレス同様に悪質性が高いと判断され、無期限の次に重い1年間の出場停止処分が下された。

 リオスは球団及びNPBの事情聴取に「昨年11月から12月に米国で受けた腰痛治療の際に注射を受け、禁止薬物が含まれていることを知った」「来日後は治療は受けていない」などと説明した。だがNPB医事委員会の医師は「昨年末に摂取した物質がこの時期に検出されることは医学的にあり得ない」と断言している。医学的見地からは、来日後、シーズン中に摂取したとしか考えられないと判断された。

 リオスの代理人である弁護士からは「本人の故意ではない」との上申書も提出された。だが故意であろうとなかろうと、検査で陽性の結果が出ればどんな事情があっても罰せられるのがドーピング検査。さらに言えばアンチ・ドーピング運動はもともとこうした筋肉増強剤を排除する理念から出発した。禁止薬物の筋肉増強剤を体内に含んだ状態でプレーしたことは動かしがたい事実であり、情状酌量の余地はなかった。

 6月末で退任となる根来コミッショナー代行は「最後にこういう事態となり大変遺憾に思っている」と述べた。長谷川コミッショナー事務局長は「これまでの3例がいずれも外国人であることを踏まえ、契約の際には十分注意するよう各球団に再度強く要請します」と実行委員会でも議題とする方針を示した。今回ヤクルト球団は落ち度がないとして処分されなかったが、相次ぐ外国人のドーピング違反で各球団にはより慎重な調査が求められることとなった。【大塚仁】