<横浜2-3広島>◇1日◇YZ・タカスタ

 4年ぶりの地元で凱旋(がいせん)弾だ。広島が4番の活躍で横浜との接戦を制し、再び借金を1とした。1点差に迫った4回、1死から栗原が横浜ウッドのスライダーを完ぺきにとらえる同点9号ソロ。チームは7回に勝ち越し、そのまま逃げ切った。山形出身の栗原は一発を含む猛打賞。駆けつけた母、故郷のファンの前で雄姿を披露した。また、大竹が粘りの投球で5月26日以来の3勝目。今日、チームは再び5割に挑む。

 その打球が赤く染まった左翼席に入ったのを見届けると、栗原は悠然とダイヤモンドを1周した。4年ぶりの地元での試合。1-2の4回、1死走者なしの場面。カウント0-1から甘く入ったスライダーを見逃さなかった。「ランナーに出てチャンスを作りたかった。センター方向を意識した。前回の山形ではいいところを見せられなかったので、いい結果を出せてホッとした」。

 04年の山形シリーズでは2試合で6打数無安打3三振。この日は母、弟、後援会の「山形健太会」のメンバーなど総勢130人以上が駆けつけた。関係者でなくても、スタンドを埋めた子どもたちは「栗原」コールに声をからした。「プレッシャーはありました」。どうしても打ちたい。その意識が初回の左前打につながった。難しいチェンジアップを強くたたいた打球は、三塁手のグラブをすり抜けた。1本でても、本塁打が出るまでは落ち着かなかった。「みんなそれしか期待していないでしょ」。この球場(YZ・タカスタ=山形県野球場)で本塁打を放つのは高校3年の春以来。9号ソロは貴重な同点弾であるとともに、故郷の人々にささげる一発にもなった。

 試合開始2時間前にはバックネット裏に母・順子さん(54)の姿があった。山形県天童市で焼き肉店を営む母。「4番って重いですよね。本人は何も言わないですけど」。グラウンドで練習する息子の姿をじっと見つめながら、順子さんは話し出した。「今年から4番になって、なかなか打てなかったじゃないですか。仙台(楽天戦)の試合を見に行った時思わず『大丈夫か。ファンの人から物をぶつけられたりしてないか?』って声をかけたんですよ。あの子は笑っているだけでした」。試合後、お立ち台で「ただいま」という息子の姿を見つめる母の目は、心なしか少し潤んでいるようにも見えた。

 3位巨人が敗れたため再び0・5差。今日にも3位浮上と5割を同時に達成する。「今日は栗原にとっていい1日だった。打撃も守備もよくやってくれた」とブラウン監督。「たくさんの人が応援に来てくれて、うれしいですよね」。思い出の詰まった球場での本塁打。その喜びをかみしめながらバスに乗り込む栗原を、数え切れない子どもたちがまるで出迎えるように見送っていた。【網

 孝広】