来年こそ-。広島は08年の最終戦で横浜に惜敗。69勝70敗5分けの4位でシーズンを終えた。7年ぶりの勝率5割も果たせなかった。球団はこの日までにマーティー・ブラウン監督(45)の来季続投を決断。新球場がオープンする来季も、同監督が進めてきた若手中心の機動力野球を継続する。4年目のシーズンに突入する同監督は今季を前向きに総括し、日本シリーズ出場を来季の目標に定めた。

 笑顔で144試合目を締めくくることはできなかった。7年ぶりの「勝率5割」という最後に残った目標。必勝を期した横浜戦は再三の好機にもあと1本が出ず、敗れた。先発篠田の頑張り、大竹のリリーフ投入もおよばない。何度も跳ね返されてきた「5割」のカベに最後も屈した。

 試合後、スタンドにサインボールを投げ入れるブラウン監督の顔には軽い笑みが浮かんでいた。苦しい戦いを終えた開放感か。決して「満足」から来る笑みではなかったはずだ。

 「クライマックスシリーズを逃し悔しかった。市民球場で日本シリーズを戦いたかった」。6カ月以上におよぶ挑戦。142試合目まで希望をつないだのは“健闘”ではあるが、4位という結果が残った以上、笑うわけにいかない。

 「だがこの1年間を私は誇りに思う。多くの評論家がカープを最下位に予想した。彼らを見返すことができたと思う。すべては選手の頑張りのおかげだ」。言葉に実感をこめた。

 青い目の指揮官の気持ちはすでに来年に向く。契約更新を望む同監督に対して松田オーナーが試合前、来季の続投を初めて明言した。「Aクラス」または「勝率5割」のノルマ達成を待たずに、続投の判断が下された。もちろん、この3年間の足跡と今年の躍進を評価されてのものだ。

 3年間で緒方、前田智という絶対的な存在だったベテランを先発から外した。2人は左右の代打の切り札として機能した。「プロ意識が高く、役割は変わったがベストを尽くしてくれた。赤松、天谷にポジションを譲ったことでチームカラーが変わった。2人が外野を守ることで、どれだけ失点が減ったことか」。

 投手陣の整備を進めたのもブラウン流の成果。酷使を避け、どの投手にも信頼を置いて、責任を与え、成長を促してきた。「永川は素晴らしい成績で頭が下がる。救援陣は横山がいない分を梅津がカバーし、上野も成長した。ブルペンにチームワークが生まれた。斉藤、篠田、前田健はもう1人前の1軍投手だと思って来季に臨んでほしい」。

 さあ、来年は新球場元年だ。外野フェンスは今より約10メートルも遠くなる。広大な緑のフィールドが4年目のブラウンカープを待っている。若ゴイが走って、打って、守り、両ベテランも打席に立つ。「新球場では足と守備が重要になる。私は先のことを考えてチームを変えた。来年もこの方向を続けていく」。ブラウン改革にはまだ続きがある。【柏原誠】