<ヤクルト1-3巨人>◇10日◇神宮

 先発したセス・グライシンガー投手(33)は9回途中1失点で今季17勝目。すでに確定させていた2年連続の最多勝だが、シーズンラスト登板を白星で飾った。

 優勝に導いたグライシンガーは充実感に包まれながら、歓喜の胴上げに加わった。上半身全体がオレンジ色のタオルで覆われたアイシング姿。それが大きな仕事をやり終えた何よりの証明だった。そのままクルーン、東野、内海らの投手陣と次々に抱き合った。

 先発ローテの中心として200イニング以上を投げ、17勝で2年連続の最多勝を獲得。「今日は守備でもいいプレーが随所に出たし、みんなのおかげ。阿部のケガが心配だよ」とチームメートに感謝した。

 マジック2の重圧をものともしなかった。3回までを打者9人で片付けてペースをつかむと、4回に2安打で1点を失っただけで終盤まで危なげなかった。マウンドには雨が降り続いたが、ロージンの粉をつけた左手首をこまめに触れて指先の感覚を保ち、精密機械のコントロールを維持した。完投目前の9回2死でお役御免。クルーンにマウンドを譲ったが、「青木はいい打者だからね」と気にも留めなかった。

 ウイニングボールは、三塁側のスタンドに惜しげもなく投げ入れた。「大事なボールだけど、1年を通して応援してくれたファンにささげたかった」。優勝の大功労者となった右腕は、どこまでも頼もしく、大きかった。【大塚仁】