阪神が元エースでヤンキース3A所属の井川慶投手(29)のUターン復帰も視野に入れ、動向調査を本格化させていることが28日、分かった。06年オフ、約30億円の破格落札でヤ軍にポスティング移籍。5年2000万ドル(当時23億6000万円)の契約を結び、2年間が経過したが今年7月にはメジャー契約を解除されるなど事実上の戦力外となっている。本人が日本球界復帰を望んだ際には手を挙げる準備も整え、ライバル球団流出の危機に備える。

 大志を抱き海を渡った元エース左腕の動向を古巣は真剣に気に掛けていた。積極的に井川のタテジマ復帰を望むのではない。ただ日本復帰となった場合、門戸を開ける用意はある。球団首脳が明かす。

 「基本的に何とかメジャーで成功して欲しいと思っているスタンスは変わらない。ただもし日本球界となった場合どうなるのか、という思いはある」

 メジャーでは2年間でわずか2勝。大きな期待に応えられていない井川は今年7月、40人枠を外れ、メジャー契約を解除された。事実上の戦力外通告だが、井川には11年までヤ軍との契約が残る。マイナー選手でも残り3年合計1200万ドル(約11億8800万円)の年俸は保証されている。

 今季ポストシーズン進出を逃したヤ軍は、今オフも落札金を含めた総額約50億円の投資額を少しでも回収しようと、あらゆる策を講じるはず。ただ米国内での井川の評価は低く、移籍交渉は両球団が約12億円のうち、どれだけ支払うかで難航することが予想される。3Aスクラントンで14勝6敗の好成績を残しても依然トレードは簡単ではない。そこでヤ軍は、ターゲットを日本に向けてくることも当然の流れと阪神サイドは受け止めている。その場合に向けた調査を水面下で継続している。

 日米間にポスティングシステムが誕生してから「出戻り」の事例はない。まして契約を残した選手の日本球界復帰には、完全に制度が確立されている話でもない。何より最後の決断は本人の意思にゆだねられる。契約が残る以上、最終的には本人がいったんヤ軍との契約を破棄し、日本球団との再契約に同意する必要がある。「(日本に)戻る気は全くありません」と井川は一貫している。一方で現地では「井川が日本復帰を望んでいる」との報道が流れるなど、状況が変わる可能性はある。

 日本球界復帰の流れとなっても、古巣の阪神も候補の1球団にすぎない。阪神時代の実績は抜群。真弓新監督が先発補強を望む中、貴重な左腕が日本の他球団にさらわれるとになれば一大事だ。特にヤ軍と業務提携を結び、資金力も豊富な巨人が移籍候補に浮上してくれば、ライバルとして放ってはおけない裏事情もある。「日本球界へ」の動きが起きれば、すぐに対応する準備は整えておく。そのために調査を続けている。「阪神井川復帰」の可能性も含め、今後の動向が注目の存在となった。