楽天岩隈久志投手(27)の沢村賞受賞が3日、決定した。楽天の投手の受賞は初めて。Kスタ宮城で会見した岩隈は、日本ハム・ダルビッシュ有投手(22)へのライバル意識が、21勝、防御率1・87、勝率8割4分という高水準の成績をもたらせたと話した。今年は03年以来の2人受賞も検討されたが、基準7項目すべてをクリアしたダルビッシュの受賞は見送られた。

 絶対的なエースにだけ与えられる沢村賞。岩隈は「投手にとって最高の賞。名誉な賞をいただき、光栄です。この賞をいただくのは先発投手の証し。すごく、うれしいですね」と素直に喜びを口にした。85年佐藤義則(阪急)以来の21勝をマークしても、確信はなかった。2軍球場で練習中も気になって仕方がない。「ドキドキしながら、今日1日練習していました」と報道陣を笑わせた。「松坂さんや斉藤和巳さん…。受賞した人って、超一流の人ばかり。ホントに、自分が取れるとは思っていなかったですから」。感激の言葉が次々と飛び出した。

 完投数(5)こそ規定に満たなかったが、その他はハイレベルな成績でクリア。飛躍の要因を「ダルビッシュがいたから、いい争いができたと思う」と話した。ライバルチームの絶対エースとの切磋琢磨(せっさたくま)が、昨季まで楽天3年間で11勝だった右腕を、完全復活に導いた。

 両エースは、4月10日、札幌ドームで投げ合った。3安打完投も1点を失い、1点に泣いた。今季初黒星となったが「自分の中で『今年はやっていける』と自信になった試合。負けた分、彼を意識しながらできたシーズンでした」と話す。8月の北京五輪では、日の丸エースを襲名したダルビッシュとは対照的に、最終選考で落選。「五輪の間、ダルビッシュを意識した。(代表漏れした)その分、チームに貢献しようと思いました」と言う。ライバル意識は結果につながる。落選が決まってからは破竹の8連勝をマークした。

 野村監督も沢村賞の知らせに「ノー文句。今年の岩隈なら当然だろう」と納得の表情。ただ「タイトルを取っても優勝しないと寂しいんだよね」と経験談を明かした。岩隈も「チームが優勝できるよう貢献できれば。(沢村賞受賞で)責任も大きくなる。また取れるよう頑張ります」と連続沢村賞で、チームを上位に導くと意気込んだ。【金子航】